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派遣法改正が目指すものとは 非正規労働者の暮らしは改善されるの?
いくら働いても暮らしが楽にならない。そんな労働者の状況を表す「ワーキングプア」が、社会問題となっています。その原因のひとつとされるのが、正社員と非正規で働く人の収入格差です。こうした現状を改善するため、2020年4月に派遣法改正が施行されます。働き方改革の一環として、賃金や待遇の格差をなくすための効果が期待されています。ここでは派遣法改正の概要とメリット・デメリット、知っておきたいポイントについて解説します。
派遣法改正の概要
労働者派遣法が初めて施行されたのは、1986年のことです。それ以降、社会の変化とともにたびたび改正が重ねられてきました。今回はどのような変更点があるのでしょうか。派遣改正の概要について、見ていきましょう。
2020年4月に施行される派遣法改正の目的
2019年11月に発表された総務省統計局の調査によると、正規の職員・従業員は前年同期に比べ8万人の減少が見られる中、非正規の職員・従業員は71万人の増加となっています。雇用者に占める非正規労働者の割合は38.5%と7期連続で上昇しており、各世代とも非正規雇用は増加傾向にあります。
(参照) 労働力調査|総務省統計局
一方その賃金格差は広がる傾向にあり、雇用形態別で比較すると正社員の収入は非正規社員の約1.5倍以上です。
(参照)平成 30 年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省
こうした中、2020年4月には派遣法改正が公布されます。今回の改正では、正社員と非正規労働者の給与・待遇の格差是正を目的としています。
これまでは社員と非正規社員の業務内容が同じであるにも関わらず、賃金の扱いに差がある職場が多く見られました。今回の派遣法改正では「同一労働同一賃金」の実現が求められており、不公平感の是正が期待されます。
派遣先からは派遣会社に対して、比較対象となる労働者の賃金など待遇情報の提供が義務付けられています。これによって、派遣労働者の給与を決める際の基準とされます。
派遣法改正の大きな柱である、「派遣労働者の同一労働同一賃金」を目指していくために、これまで明らかでなかった部分を正しく開示することが重視されています。
派遣会社が派遣社員の賃金を決める2つの方法
派遣社員の給与は派遣会社から支払われますが、派遣法改正後にはその賃金を決めるための2つの方法のいずれかが選択されます。
- 派遣先均等・均衡方式
派遣社員の給与などの待遇を、派遣先の社員に合わせる方法です。派遣先企業からもたらされる情報を元に、雇用形態に関わらず、同じ業務を行う正規社員と同等の待遇が受けられます。
この方式のデメリットとしては、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わり、派遣労働者の所得が不安定になる点が挙げられます。
- 労使協定方式
労使協定方式は、派遣先の企業の給与水準と関係なく、派遣会社と労働者間で一定要件を満たす労使協定を結んで、給与を決定する方式です。
賃金の額の決定においては、その業務を行う一般的な労働者の平均的な賃金と比較して、同等以上の賃金になるよう設定されることが義務付けられます。
この方式では、一度取り決められたものを後から変更することができないため、派遣先の給与水準が高くても派遣社員側からは意義を唱えることができません。
派遣先企業では、派遣会社がどちらの方式を選択しているのかで、提供する情報の内容が変わってきます。
派遣法改正にともなうメリット・デメリット
派遣法の改正は派遣社員の利益を守る目的で施行されますが、メリットばかりとは言えない一面があります。派遣労働者側、企業側それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
派遣社員から見たメリットとデメリット
- メリット
派遣社員としてどれほど能力が高くても、雇用形態の差によって評価してもらえずに悔しい思いをしているという声は少なくありません。今回の派遣法改正により、社員と同等の能力評価の機会が与えられ、働くモチベーションが向上することが期待できます。
派遣社員という立場によって抑えられていた賃金体系が、正しく再評価されることで、手取り額が上がる可能性もあります。
- デメリット
「同一労働同一賃金」の考え方により、正社員と同様の成果が求められるようになります。これまでは「派遣だから」と見過ごされていたようなミスも許されなくなり、業務能力への要求が厳しくなるといった可能性もあります。
派遣社員の賃金を抑えるために、与える仕事の水準を低くする企業も出てくると予測されます。これまで任されていた業務内容よりも劣るなど、区別されるようになると仕事への意欲が低下するかもしれません。
企業側からすれば、これまでは経済的なメリットから派遣社員を使っていたというところもあるでしょう。派遣社員よりもコストの安い外注委託を選ぶ企業が増加すれば、それだけ派遣先が減ることになります。
企業側から見たメリットとリスクやデメリット
- メリット
業務内容に見合った賃金により、労働者側の納得が得られることで、高い能力をもった人が派遣社員として働くようになることが期待されます。
企業側にとっても、優秀な人材確保の機会が増えるというメリットが得られます。
業務と給与のバランスが良くなれば、仕事への満足感も得られるため、職場への定着率の向上にもつながります。
- デメリット
「同一労働同一賃金」が実現すれば、正社員側にも不満の声が出ることが予測されます。わざわざ正社員で働くことの意味を、疑う人が出てくるかもしれません。正社員の不満に対しては、早期に察知し、回避策が必要です。
「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」いずれの方式であっても、正社員と非正規社員の格差是正という点では変わりがありません。派遣先の人件費負担の増加は避けられないと考えられます。
法改正にあたり、派遣先・派遣元ともに罰金や行政処分の対象となる行為が追加されています。派遣法の改正点を良く理解せずにこれまで同様の運用をしていると、法令遵守に対する罰則のリスクが高くなります。
今回の法改正においては、企業に対する義務項目の追加があります。確認や報告といった手間が増えることも、懸念されています。
派遣法改正について押さえておきたいポイント
派遣法改正にあたり、派遣について再度確認しておくべきことや知っておきたいこともあります。押さえておきたいポイントを見ていきましょう。
3年ルールについて
派遣の3年ルールとは、2015年9月30日から施行された派遣法の規定です。
このルールでは、同一の職場で働けるのは3年までとされており、それ以上は継続して同じ職場で働くことができません。
これは安い賃金での継続雇用を防止する目的で置かれたルールですが、気に入っている業務を長く続けられないという労働者側のデメリットにもなります。
3年経過後は派遣先での直接雇用や、派遣会社での雇用などの、雇用安定措置を受けられます。
そのため正社員雇用への可能性が拡大する一方で、3年以内で契約解除の恐れも出てきます。
以前は長期の継続雇用が認められていた専門26業種であっても、期間が3年に制限されることに注意が必要です。
派遣法改正で労働者が知っておきたいこと
労働者派遣法の改正の施行日2020年4月1日には、中小企業の経過措置(猶予措置)が設けられていません。そのため、事業規模によらず一斉に施行されます。
「うちは小さい会社だから」という言い訳はできないため、不審な点があれば派遣社員から申し立てることができます。
法改正に従った情報開示の規定により、派遣元に対して派遣労働者に対する説明義務が設けられました。派遣社員の側から、派遣先に関する情報などを提示するよう求めることができます。
なお、説明を求めたことを理由とする解雇や、待遇の変更、その他派遣社員に対しての不利益な行為は認められていません。自分が働く環境について知ることは、当然の権利であるのを理解しておきましょう。