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溶接の資格の種類と取り方・難易度・費用~資格なしでも働ける?
溶接の資格は、数や種類が非常に多いのが特徴です。溶接工として働くのに必須といえるものから、管理職向けの上級資格まで幅広くあり、取得難易度もさまざまとなっています。こちらでは、おすすめの溶接の資格をキャリアステージに合わせて紹介していきます。
資格なしで溶接の仕事はできる?
溶接の種類によっては、労働安全衛生法などで定められた国家資格の取得が必要になります。
アーク溶接に携わるには、「アーク溶接等の業務に係る特別教育」の修了が義務づけられていて、これは一般的に「アーク溶接作業者」という資格として呼ばれています。
同様に、ガス溶接に携わるには「ガス溶接技能講習」の修了による「ガス溶接技能者」の取得が必要です。さらに、「ガス溶接作業主任者」の有資格者からガス溶接作業主任者を選定し、作業方法の選定や作業者への指示などの管理業務を行うことが義務付けられています。
ボイラーの溶接の場合は、必要な資格として「ボイラー溶接士」があり、資格取得には一定の実務経験を積んだうえで、国家試験に合格する必要があります。
使用者は無資格の作業者を従事させていると、罰則として6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
溶接の資格の種類
溶接方法や溶接する材料によって、作業に必要な国家資格のほか、民間資格、指導者や管理者向けの資格があります。企業によっては、こうした溶接の資格を取得することで資格手当が支給されるケースもよく見られます。また、資格の取得を通じて管理職を目指せるなど、キャリアアップを図ることも可能です。
さまざまある溶接の資格ですが、主なものには下記が挙げられます。
- ・アーク溶接作業者
- ・ガス溶接技能者
- ・ガス溶接作業主任者
- ・アルミニウム溶接技能者
- ・PC工法溶接技能者
- ・ボイラー溶接士
- ・溶接管理技術者
- ・溶接作業指導者
以下では、初心者向けの資格として、「アーク溶接作業者」と「ガス溶接技能者」、業務範囲を広げたい溶接従事者向けに「ボイラー溶接士」、管理職・マネジメントに進みたい溶接従事者向けに「溶接作業指導者」を紹介していきます。
それぞれの資格について、難易度や取り方、受験資格、費用などを見ていきましょう。
●アーク溶接作業者 【難易度:初心者向け】
溶接の入門資格のひとつが「アーク溶接作業者」です。
資格の名称 | アーク溶接作業者(アーク溶接等の業務に係る特別教育) |
溶接方法 | アーク溶接 |
取得難易度 | 簡単 |
受験資格 | なし |
取得・講習受講費用 | 1万円~2万3,000円程度 |
▼取り方・取得方法
アーク溶接等の業務に係る特別教育を修了すると、アーク溶接作業者と呼ばれる資格を取得することができます。学科11時間、実技10時間の合計21時間の講習を受講することで取得が可能で、講習は3日間で行われます。
▼仕事の内容
アーク溶接は多くの金属の溶接に用いられ、主流とされている溶接方法です。アーク溶接作業者は、溶接棒と接合する材料の間に、気体の放電現象であるアークを発生させることで生じる高熱で金属を溶解させて、溶接を行います。
アーク溶接作業者は、アーク溶接の作業に従事するために必須の資格です。アーク溶接では感電や火災、爆発などの災害が発生する危険性があるため、作業に従事するには特別教育の受講による資格取得が義務付けられています。
▼ 資格の需要・将来性
アーク溶接作業者は、自動車工場や自動車修理工場、鉄工所、造船所のほか、建設業でも活躍の場があります。
大規模な工場では、半自動溶接や自動溶接、ロボット溶接が導入されているケースもありますが、対応できる溶接時の姿勢や形状が限られています。また、中小の工場まで自動化が一気に進むことは考えにくいことからも、今後も一定のニーズがあることが見込まれます。
▼こんな人におすすめ
- ・これから溶接の仕事に就きたい人
- ・DIYで溶接をするために知識を身につけたい人
●ガス溶接技能者 【難易度:初心者向け】
ガス溶接技能者も溶接工の入門資格です。
資格の名称 | ガス溶接技能者(ガス溶接技能講習) |
溶接方法 | ガス溶接 |
取得難易度 | 簡単 |
受験資格 | なし |
取得・講習受講費用 | 1万3,000円~2万2,000円程度 |
▼取り方・取得方法
ガス溶接技能者は、ガス溶接技能講習の修了によって取得できる資格です。ガス溶接技能講習は学科8時間、実技5時間の合計13時間の講習があり、学科の修了試験に合格する必要があります。
修了試験は全体の6割以上、3科目のそれぞれが4割以上の正答が合格基準となっています。ただし、講習の内容を理解していれば難しい試験ではなく、ほとんどの人が合格するとされています。
▼仕事の内容
ガス溶接技能者は、アセチレンなどの加熱性ガスと酸素を用いて、高温の炎で金属を溶かして、溶接や溶断を行います。ガス溶接はアーク溶接に比べて溶接に時間がかかるため、溶接部分を確認しながら作業を進めやすいことや、温度調整がしやすいことから、薄い材料も溶接しやすいという特徴があります。
ガス溶接技能者はガス溶接に従事するのに必須となる資格です。
▼資格の需要・将来性
ガス溶接も自動車工場や造船所を中心に、鉄工所や建設業の現場などでニーズのある資格です。一部の工場ではロボット化が進められていますが、複雑な作業をロボットが担うのは難しいため、熟練のガス溶接工を中心に、将来にわたって一定のニーズがあることが考えられます。
▼こんな人におすすめ
- ・これから溶接の仕事に就きたい人
●ボイラー溶接士 【難易度:中級者向け】
ボイラーの溶接は、ミスがあると重大な事故を招きかねない重要な作業領域であるため、国家資格が設けられています。
資格の名称 | ボイラー溶接士(普通ボイラー溶接士・特別ボイラー溶接士) |
取得難易度 | やや易しい |
受験資格 | 普通ボイラー溶接士:ガス溶接・自動溶接を除く溶接作業の1年以上の実務経験
特別ボイラー溶接士:普通ボイラー溶接士免許の取得後、ガス溶接や自動溶接を除く、ボイラーまたは第一種圧力容器の溶接作業の1年以上の実務経験 |
取得・講習受講費用 | 普通ボイラー溶接士:学科試験6,800円、実技試験18,900円
特別ボイラー溶接士:学科試験6,800円、実技試験21,800円 |
▼取り方・取得方法
ボイラー溶接士の資格を取得するには、普通ボイラー溶接士と特別ボイラー溶接士のいずれも、学科試験と実技試験へ合格する必要があります。
令和元年度の合格率は、普通ボイラー溶接士は学科試験59.3%、実技試験64.5%です。特別ボイラー溶接士は学科試験70.3%、実技試験91.5%となっています。
▼仕事の内容
ボイラー溶接士は、ボイラーや第1種圧力容器の製造、改造、修繕に関わる溶接を行います。
普通ボイラー溶接士は、ボイラーや第一種圧力容器の溶接業務のうち、溶接部が厚さ25㎜以下のケースや管台、フランジなどの取り付けのみが行える資格です。特別ボイラー溶接士は、ボイラーや第一種圧力容器のすべての溶接業務を行えます。
▼ 資格の需要・将来性
ボイラー溶接士はボイラーを製造する工場や発電所などで需要のある資格です。ボイラー溶接には高度な技術が必要であり、有資格者は限られているため、ニーズが高い状況が続くことが見込まれます。
▼こんな人におすすめ
- ・溶接の実務経験のある人
- ・ボイラー溶接を行う工場で働いている人
- ・溶接の専門性を高めて仕事の幅を広げたい人
●溶接作業指導者 【難易度:上級者・管理者向け】
溶接作業指導者は、日本溶接協会が認定する、溶接を行う作業員へ指導を行うための資格です。民間資格のため、必ずしも必要な資格ではありませんが、溶接に関するスキルの証明に役立ちます。
資格の名称 | 溶接作業指導者 |
取得難易度 | やや易しい |
受験資格 | 満25歳以上、JISまたは公的団体の溶接資格および実務経験 |
取得・講習受講費用 | 5万1,700円 |
▼取り方・取得方法
溶接作業指導者は3日間の講習を受講して、筆記試験に合格することで取得できます。筆記試験の合格率は100%とされていますので、講習の内容を理解できればほぼ合格できるといえます。
▼ 仕事の内容
溶接作業指導者は熟練の技術を活かして、工場や建設現場の班長や職長として、溶接の作業員に対して指導などを行う役割を担います。具体的には、溶接の工程管理や指示、作業方法の指導、実施記録の作成を行うほか、溶接の作業を担うこともあります。
また、日本溶接協会では上位資格として溶接管理技術者という資格を設けており、溶接作業指導者は溶接管理技術者と作業員の橋渡し役も担います。
▼資格の需要・将来性
溶接は高度な専門性が求められる仕事です。豊富な実務経験と現場の理解が必要とされる溶接作業指導者は、キャリアアップに役立つ資格といえるでしょう。
▼こんな人におすすめ
- ・工場や建設現場の班長や職長、溶接工事の現場監督
- ・溶接の指導を行う人
- ・溶接の業務で管理職を目指している人
まとめ
溶接の仕事では、資格を取得していくことで、高度な技能が必要とされる業務に携わるなど仕事の幅を広げたり、管理職を目指したりすることが可能です。まずは、アーク溶接作業者やガス溶接作業者を取得して、実務経験を積みながら、さらなる資格の取得を通じてキャリアアップを目指していきましょう。
監修/細原敏之
高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。
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