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オワハラとは? 嘘はダメ?事例への対策と答え方・内定承諾書と違法性の関係は?
新卒の就職活動や転職時の就職エージェントのアプローチとして問題となっている「オワハラ」は、就活のトレンドワードにもなっています。企業側の採用意欲が高いこと自体は就活生にとってポジティブな要素ですが、望まぬオワハラに屈してしまうと、本来、志望度の高い企業への就職が実現できなくなることもあります。 オワハラとは何か、その概要についてあらためて確認したうえで、オワハラのよくある事例や対策を紹介していきます。
オワハラとは?
オワハラとは、新卒採用における「就活終われハラスメント」の略称です。企業が内定を出した学生に対して、就職活動を終えるように迫る行為や、長期的に拘束することを内定条件にする行為などがオワハラに該当します。
オワハラは就活生に義務のない行為を要求していることから、ハラスメントに位置付けられています。
オワハラの背景に潜む「早期選考」
オワハラが横行する背景には、経団連の就職協定による新卒採用スケジュールの変遷があります。
近年、オワハラが問題視される契機となったのは、2016年卒の広報活動開始を3月1日、選考活動開始を従来の6月1日から8月1日に後ろ倒しした新卒採用スケジュールです。これにより、経団連に加入していないベンチャー企業や中堅企業、外資系企業は、大企業よりも早期に内定を出した結果、大企業に人材をとられないようにするため、オワハラと呼ばれる行為が横行するきっかけとなりました。
ただし、その後の新卒採用スケジュールは、2017年卒から選考活動開始が6月1日からに戻されました。また、経団連に加入していない企業による新卒採用スケジュールの形骸化によって、経団連による就活ルールは2021年に廃止され、政府主導の新ルールが設けられることになりました。
ただし、2022年卒までは現行の就活ルールが継続され、2023年卒以降も同様となることが見込まれています。
意欲の高い優秀な人材は限られる
いわゆる「経団連ルール」が廃止されたあとも、オワハラが問題視される状況は変わらないと見られます。オワハラの横行には、学生の二極化という側面もあるためです。
就職活動に対し意識の高い学生は早期に行動を開始して企業と接触して、多くの内々定を得ることになります。内々定を辞退されると、意欲の高い優秀な人材が限られている中で、企業は採用活動を再び始めなければならず、人材の確保が難しくなることがオワハラにつながっているのです。
オワハラの事例
オワハラは実際にどのような行為として行われているのでしょうか? 代表的な例を紹介していきます。
●進行中の他社選考の辞退をその場で迫る
●内定承諾書へのサインを求める
●理系学生への「推薦状ハラスメント」
●インターンや懇親会を高圧的に設定し就活生のスケジュールを拘束する
●脅迫的にアプローチしてくる
進行中の他社選考の辞退をその場で迫る
1つ目は、面接の際に「他社の選考をすべて辞退するなら、内定を出すよ」と告げるなど、今後は他社の説明会や面接などには行かず、選考を辞退するように迫る行為です。悪質なケースでは、その場で電話をかけさせて選考を辞退することを迫ります。
これは交渉型オワハラといわれているものの一つで、学生側に判断を委ねているようにも見受けられますが、学生にとっては大きなプレッシャーとなるものです。
内定承諾書へのサインを求める
2つ目も交渉型オワハラで、内定を出す代わりに内定承諾書へのサインを求められるケースです。内定承諾書は、企業によっては「内定誓約書」「入社誓約書」「就職承諾書」などさまざまな名称があり、「2023年4月の入社を約束します」「正当な理由がない限り、承諾書の内容に反することはしません」といった文言が記載されています。
ただし、内定承諾書にサインしても法的拘束力はなく、損害賠償が認められることはほとんどないため、就職活動を続けても問題ないとされています。それは、一つには憲法22条第1項で「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と記載され、職業選択の自由が認められているためです。
・参照:厚生労働省「憲法22条に規定する職業選択の自由について」
また、内定承諾は一種の労働契約を結ぶことを意味し、内定辞退は労働契約の解約を意味します。民法627条において、雇用期間の定めのない労働契約は、いつでも解約の意思表示が可能であり、申し入れから2週間が経過すると解約が成立します。同様に内定辞退も労働者の自由な意思によって可能なのです。
・参照:日本労働組合総連合会「労働相談」
こうした理由から、内定承諾書にサインをしても就職活動を続けることに問題はありません。
理系学生への「推薦状ハラスメント」
主に理系学生に対するオワハラとして問題となっているのが、3つ目の推薦状ハラスメントです。
理系学生の就活では、従来から2つのルートがありました。
●学校推薦ルート
●自由応募ルート
学校推薦ルートは、企業からの求人に対して大学側で採用を希望する学生をとりまとめて応募するもので、内定を得やすい反面、内定が出たら基本的に辞退することはできません。内定辞退は企業と大学の信頼関係に関わってくるためです。
自由応募ルートは、学生が文字通り自由に直接企業に応募するもので、推薦ルートよりも内定をとりにくいですが、自由に内定を辞退できます。
昨今問題になっているのは、自由応募ルートで応募したにも関わらず、推薦ルートへの変更を求めるケースや、最終面接や内定を出す段階で、所属する研究室の教授や大学の推薦状を求める、「後付け推薦」と呼ばれるケースです。
推薦ルートへの変更や後付け推薦に対して、大学の対応はさまざまです。学生の判断に任せるケースや後付け推薦は辞退してもよいとするケースのほか、後付け推薦でも辞退は認めないとするケースもあります。
インターンや懇親会を高圧的に設定し就活生のスケジュールを拘束する
4つ目はインターンや研修、懇親会など、内定者が集まる機会を高圧的に設定して、就活生のスケジュールを拘束する束縛型オワハラといわれるものです。頻繁に課題の提出や研修への参加を求めることで、他社への就職活動にかける時間をとらせないようにするケースが該当します。
また、大手企業などの就活スケジュールに沿って採用活動を行う企業の選考解禁日や、就活の大規模イベントがある日に研修などを設定するケースもみられます。中には「参加しないのであれば、内定を辞退したとみなす」として、参加を強制するケースもあります。
このほかには、役員などが高級な食事に何度も連れていくことで情が沸くように仕向けるケースもあり、同情型オワハラとも呼ばれています。悪質なケースでは、抜き打ちでスケジュール帳をチェックするといったケースが挙げられます。
ただし、研修や懇親会を開催すること自体は問題なく、すべてがオワハラにつながるものではありません。コミュニケーションの一環としても開催されているという点は理解しておきましょう。
脅迫的にアプローチしてくる
5つ目は脅迫型オワハラと呼ばれるケースです。
・「内定辞退をするのであれば、損害賠償を請求する」
・「内定を辞退するなら今後は出身大学からは採用しない」
・「ウチの内定を断っても他社で採用されるのは難しいよ」
企業側からこうした脅迫的なアプローチが行われることで、学生は精神的なダメージを受けることが考えられます。
オワハラに違法性はあるのか
オワハラは就活生の職業選択の自由を阻害する行為であり、程度によっては脅迫罪や強要罪に該当するなど、違法性があるハラスメント行為であることが考えられます。
たとえば、「ぜひ、当社に入社して欲しい」「できれば、他社の内定を辞退して欲しい」と、人事担当者などが話をする程度であれば、希望を伝えているに過ぎないことから、通常の採用活動の範囲内とみなされます。
一方で、「他社の内定を辞退しないのなら、悪評を流す」「当社の内定を辞退した場合には、採用活動の費用の請求を行う」と伝えられた場合には、脅迫罪に該当する可能性があります。
また、強要罪に該当する可能性があるのは、脅迫や暴行が行われたことで義務のないことをさせられた場合です。他社の内定を辞退したことで、土下座を求められる、謝罪文を書かされるといったケースが該当します。
あるいは、他社からの内定を辞退させられることによって、精神的な苦痛を被った場合には、程度によっては民法上の不法行為として、損害賠償請求を行える可能性もあります。
不当な要求に屈することがないように、オワハラの違法性について理解しておくことが大切です。
どうする?就活生にできるオワハラ対策と答え方・断り方
実際に応募した企業からオワハラとされる行為が行われた場合には、就活生はどのように対応するべきなのでしょうか? 就活生にできる受け答えの仕方などオワハラ対策についてみていきます。
その場での選考辞退には応じない
内定を出す代わりに、その場で他の企業に電話をして内定を辞退することを迫られても、指示に従う必要はありません。職業選択の自由があり、本人の意思にもとづいて自由に就職活動を行う権利を脅かすことは許されない行為です。
また、そのような行為を強要する企業は、従業員を大切にしているとは考えにくいです。膨大な量の業務を強引に押し付けてきたり、能力や経験に対して高すぎるノルマを設定したりするなど、ブラック企業の可能性が大いに考えられるでしょう。
第一志望のケースなど、「その企業でぜひ働きたい」と思う場合を除いては、その場で選考辞退に応じるのは避けましょう。志望度が低い場合には、むしろ内定を辞退することも選択肢となります。
噓の回答を貫く
オワハラといわれる行為が行われても、すべて本当のことを話すのではなく、嘘の回答を貫くのも一つの手段です。
たとえば、他社の選考を辞退するように迫られるケースでも、その場で電話をかけるなどを求められなければ、「はい、わかりました。他社は辞退します」と口頭で伝えておきます。その後、実際には就職活動を続けていても違法性はありません。
あるいは、そもそも「他社の選考は受けていない」「他社から内定はもらっていない」と言っておく方法もあります。そもそも、オワハラは自社への就活生の囲い込みのために行われるものです。他の企業に行く心配が明らかな形でなければ、オワハラを受ける可能性が低くなります。
あるいは志望度を伝えているケースなど、他社も受けていることを伝えている場合には、「親と相談して決めることになっています」と伝えるのも手です。この場合にも、あまりにも強引であれば、内定を辞退することも選択肢となります。
また、研修や懇親会が実施される日程が他社の選考と重なる場合には、あらかじめ家庭の事情などの理由で、参加できないことを伝えておきましょう。
脅迫は無視
内定承諾書には法的な拘束力はないため、内定承諾書に署名・捺印をしたからといって、内定の辞退ができないわけではありません。内定を辞退した企業の採用担当者から、「内定辞退を考え直して欲しい」と話があった程度では、希望を伝えられているに過ぎませんが、「内定辞退は認めない」と強要する権利はないのです。
脅迫と受け取れる行為まで行われた場合は、ブラック企業に該当する可能性が濃厚です。むしろ無視をして、就職先の候補からは外すのが妥当でしょう。
脅迫が執拗に行われるなど、オワハラで悩んでいる場合には、まずは大学の就職支援センターなどに相談しましょう。