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半自動溶接のやり方・動かし方ときれいに仕上げるコツ|就職には資格が必要?
金属を溶かして接合する技術である溶接にはさまざまな種類があり、アーク溶接の一部には「半自動溶接」という方法が主に採用されています。未経験・無資格者でも、半自動溶接の仕事に就くことはできるのでしょうか? 半自動溶接のやり方や種類、メリットなどを確認したうえで、きれいに仕上げるためのコツなどについても触れていきます。
半自動溶接のやり方と種類
半自動溶接とは、トーチで溶かす溶接材料である「ワイヤー」が半自動溶接機から自動で供給され、溶接自体は手動で行う溶接方法です。溶接が自動で行われるわけではなく、溶接自体は手で行い、溶接材料の供給のみが自動となっているため、半自動溶接と呼ばれています。
トーチとは、ガスなどを使って溶接を行うときに使う器具のことです。半自動溶接では、トーチの先端からガスを流して金属を包み込むことで、融解した金属の気泡の形成を防いでいます。このガスはシールドガスと呼ばれ、使用するガスの種類のほか、加工に適した金属にも違いがあります。
ワイヤーが自動供給されるスピードの速さ、作業効率の高さから、半自動溶接は幅広い現場で用いられており、機械などの部材を溶接する小規模な工場から、大きなサイズの建材を溶接する建築現場・造船所までと、活用の場は業種業態や規模を問いません。
半自動溶接の種類
半自動溶接の機械には、シールドガスを使うガスシールドアーク溶接機と、ガスを使用しないノンガス溶接機があります。
半自動溶接のうち、ガスシールドアーク溶接は使用するガスの種類によって、「CO2溶接」「MAG溶接」「MIG溶接」という種類にさらに分類されます。
CO2溶接 | MAG溶接 | MIG溶接 | |
---|---|---|---|
使用するガス | 炭酸ガス | 炭酸ガス20%・アルゴン80%の混合ガス | アルゴン |
主に溶接する素材 | 鉄 | 鉄・ステンレス | アルミニウム・ステンレス |
特徴 | ●炭酸ガスを使用するため安価
●強度が高い ●スパッタが多く、外観は悪くなりやすい |
●2種類のガスを使用し、CO2溶接とMIG溶接の欠点を補い合う
●MIG溶接よりも強度が高い ●CO2溶接よりはスパッタが少ない |
●アルゴンを使用するため高価
●非鉄金属にも使用できる ●強度が劣る ●熟練の技術を要されるが、仕上がりがきれい |
CO2溶接
CO2溶接は二酸化炭素などの炭酸ガスを使用する方法で、主に鉄の溶接に用いられています。炭酸ガスの価格が安価なことから、半自動溶接機でもっとも採用されているのはCO2溶接です。
CO2溶接は、強度が高いことがメリットです。一方で、スパッタ(※溶接でできる粒)が発生しやすいため、外観が悪くなりやすいというデメリットがあります。
MAG溶接
MAG溶接は、炭酸ガス20%とアルゴン80%の混合ガスを使用する方法です。炭酸ガスを使用することで熱エネルギーが集中するため、アルゴンのみを使用する場合よりも深く溶け込み、強度が増します。また、CO2溶接よりもスパッタが少ないことも特徴です。
このように、CO2溶接とMIG溶接の欠点を補い合っているのがMAG溶接の特徴です。また、チタンやアルミニウムといった非鉄金属の溶接には向いていないことから、主に鉄やステンレスの溶接に用いられています。
MIG溶接
MIG溶接はシールドガスにアルゴンを使用する方法です。非鉄金属の溶接も可能で、ステンレスやアルミの薄板に向いています。また、熟練の技術が必要とされますが、施工がスピーディできれいに仕上がるというメリットがあります。一方、溶け込み不良による強度の低下を招きやすい点がデメリットとして指摘されています。
MIG溶接はアルゴンが安価な欧米では広く利用されていますが、日本では高価なため、あまり用いられていません。
シールドガスを使用しない「ノンガス溶接機」
半自動溶接機には、シールドガスを使用しないノンガス溶接機もあります。ほかの溶接方法ではシールドガスが風の影響を受けるため設置場所に制限が生じるのに対して、ノンガス溶接機は風の影響を考慮しなくてよい、ガスボンベが不要といったメリットがあります。
ただし、スパッタや微粒子のヒュームができやすい点がデメリットです。そのため、ノンガス溶接機は鉄の溶接への利用が中心で、スパッタ対策のため、スパッタ防止スプレーが用いられることもあります。
半自動溶接のメリット
半自動溶接には、次に挙げるようなメリットがあります。
●初心者でも作業が比較的簡単
●金属の種類に合わせて溶接方法を選択できる
●溶接スピードが速い
●屋内でも屋外でも作業できる
初心者でも作業が比較的簡単
半自動溶接では、溶接自体は手動で行います。しかし、溶接電流や電圧をダイヤル方式で半自動溶接機に設定できることから、初心者でも比較的簡単に作業環境を整えられます。
また、ワイヤーが自動で供給されるため、片手でトーチ、もう一方の手で加熱して溶かす金属である溶接棒を持つということもありません。両手でトーチを持てるため、作業性に優れています。
こうした理由から、半自動溶接は初心者でも比較的簡単に習得しやすいことがメリットに挙げられます。
金属の種類に合わせて溶接方法を選択できる
半自動溶接機は、CO2溶接用やMAG溶接用、あるいはMIG溶接用といったように、種類ごとに分かれているわけではありません。ガスボンベを付け替えることで、いずれの溶接方法にも対応できます。
そのため、半自動溶接機が一台あれば、溶接を行う金属の種類に合わせて、鉄ならCO2溶接、アルミニウムならMIG溶接といった要領で、溶接方法の選択が可能です。さらに、シールドガスを使用する方法だけではなく、ノンガス溶接機としても使える機種もあります。
溶接スピードが速い
手溶接の場合は、アーク棒が短くなるとトーチを交換する必要があるため、長時間にわたって連続して作業を行うことができません。
これに対して半自動溶接は、金属と溶接方法の相性や、電流の設定などの作業環境が適切であれば、溶接にかかる時間が短くなり、スピーディに作業が進められます。そのため、半自動溶接は大量生産される製品の溶接工程にも使われているほか、広範囲の作業にも向いているため建設工事現場でも採用されています。
屋内でも屋外でも作業できる
半自動溶接のうち、シールドガスを用いるCO2溶接やMAG溶接、MIG溶接は屋内での作業に限られますが、ノンガス溶接機を使用する場合は風による影響を受けないため、屋外での作業も可能です。
きれいなビードに仕上げる!半自動溶接のコツ
すでに半自動溶接の仕事に関わっている人であっても、「半自動溶接のコツを知りたい」「ビードをもっときれいに仕上げられるようになりたい」など、悩みを抱えていることも少なくありません。半自動溶接で疑問を持つ人が多い項目や、きれいに仕上げるためのコツを紹介していきます。
用途に適した半自動溶接機を選ぶ
半自動溶接をきれいに、できるだけスピーディに仕上げるには、まずは用途に適した機械を選ぶことが大前提です。そこで、ポイントとなるのは以下の点です。
●ガスシールドアーク溶接機か?ノンガス溶接機か?
●溶接する材料は?
●半自動溶接機の入力電圧は100Vか?200Vか?
ガスシールドアーク溶接機か?ノンガス溶接機か?
ガスシールドアーク溶接機とノンガス溶接機のどちらを選ぶかという観点では、対応できる溶接の種類を理解しておくことが大切です。
ガスシールドアーク溶接機はCO2溶接とMAG溶接、MIG溶接のいずれにも対応しているのが基本です。ただし、なかにはCO2溶接専用の機種もあるなど、3種類の溶接方法のうち対応できないものもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
一方、ノンガス溶接機はガスボンベが不要で小型であるほか、屋内でも屋外でも作業ができるというメリットがあります。しかし、スパッタやヒュームが発生しやすいため、仕上がりを重視したい場合には向いていません。
予算に余裕がある場合には、CO2溶接とMAG溶接、MIG溶接、さらにノンガス溶接のいずれにも対応できる機種を選ぶという選択肢もあります。一般的にガスシールドシールドアーク溶接機の方が高価であり、ガスボンベの購入費用もかかりますが、ノンガス溶接機はフラックスワイヤーが高額で、ランニングコストがかさみやすい点にも留意しましょう。
溶接する材料は?
溶接する材料の面では、主にCO2溶接は鉄、MAG溶接は鉄やステンレス、MIG溶接はアルミニウムやステンレス、あるいはノンガス溶接は鉄に適しているなど、溶接方法による向き不向きがあることも考慮します。
半自動溶接機の入力電圧は100Vか?200Vか?
半自動溶接機の入力電圧もポイントです。100Vと200Vの機種がありますが、2mm程度の薄板が中心の場合は100V、6mm程度の厚板が中心であれば200Vが向いています。
ストリンガーとウィービング
半自動溶接のトーチの動かし方には、ビードと呼ばれる溶接痕の形状に応じた種類があります。
●ストリンガービード:トーチを溶接部分に対して直線に進める方法
●ウィービングビード:トーチをジグザクに進める方法
ストリンガービードの方が凸状の膨らみは大きくなり、ウィービングビードは幅が出るもののやや平坦という特徴があります。まっすぐにビードを描くことの難しさや作業効率などから、一般的にはウィービングビードが用いられることが多いです。
半自動溶接のトーチの動かし方
半自動溶接のトーチの動かし方に応じて、前進法と後進法という分類もあります。初心者が取り組みやすいのは前進法ですが、後進法もできるようになると、幅広い加工に対応しやすくなります。
前進法 | 後進法 |
---|---|
●進行方向に向けてトーチを押して動かしていく
●溶接していく箇所が見えやすい ●溶接中にビードがどのようにできているか見えにくい ●ビードが平坦になりやすい ●金属の溶け込みが浅くなりやすい ●スパッタができやすい |
●進行方向の後ろ方向にトーチを引いて動かしていく
●溶接していく箇所が見えにくい ●溶接中にビードがどのようにできているか見やすい ●ビードが膨らみやすい ●スパッタが比較的少ない |
半自動溶接が上手くいかず玉になる
半自動溶接の初心者の失敗でよく聞かれるのが、玉になってしまうケースです。母材が上手く溶けていないことが原因ですが、電流が低すぎるか、あるいは電流に対してワイヤースピードが遅すぎることが主な理由です。ワイヤーの径によって適切なスピードが異なる点にも注意しましょう。
初心者でも可能?半自動溶接を仕事にするには
溶接は初心者から始めて、手に職をつけられる仕事です。未経験の見習い溶接工からスタートして、技術を身につけたり、資格を取得したりすることで、中堅、ベテランとスキルアップしていき、収入アップを目指すこともできます。
10代、20代はもとより、30代から未経験でスタートすることも可能です。溶接工は20代から50代くらいまで幅広い年齢層の求人があり、60代やそれ以上のシニア層で活躍している人も少なくありません。
溶接工は、以下のような適性を有する人に特に向いている仕事です。
<溶接工に向いている人>
●健康管理ができて体を動かすのが好きな人
●失敗を糧として前向きに取り組める人
●正確にスピーディに作業を進められる人
●細かい作業をコツコツとやるのが得意な人
●必要な知識や技術の習得に意欲的に取り組める人
●技術者としてスキルアップしていきたい人
半自動溶接の資格
半自動溶接を含め、アーク溶接は危険を伴う作業です。そのため、事業者には作業者にアーク溶接等特別教育を受講させることが義務付けられています。「アーク溶接等特別教育」は溶接の入門資格と位置付けられ、学科11時間、実技で10時間の3日間の受講で、修了証が交付されます。
また、半自動溶接に関する資格として、一般社団法人日本溶接協会による民間資格「半自動溶接技能者資格」があります。「マグ溶接」「組合せ溶接」「セルフシールドアーク溶接」の3つの溶接方法に分かれ、それぞれに基本級と専門級があります。さらに溶接姿勢や試験材料の種類や厚さ、溶接継手などの区分によって細分化されています。
半自動溶接技能者資格の取得を通じてスキルアップを図れるほか、スキルを証明するための手段にもなるでしょう。
溶接の資格に関しては以下の記事でも詳しく紹介しています。合わせてご確認ください。