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大喜利の思考法を面接に活かせ!大喜利のプロに秀逸な回答を導く考え方とコツを聞いた
面接は大喜利に通ずる
就活noteをご覧のみなさまこんにちは。ライターの神田(こうだ)です。
就活って大変ですよね。志望動機や自己PRを考えるのも大変だし、自分以外の参加者がエサをねだる鯉のようにパクパクとしゃべるグループディスカッションで冷や汗をかかなければいけない。
そして何より大変なのが面接ではないでしょうか。
「あなたを動物に例えると?」「あなたの長所を教えてください」など、紋切り型の質問にウィットに富んだ回答をして、面接官に人柄の良さや頭の回転の速さを強く印象付ける必要があります。
ところで、この“ユーモアのある回答を即座に提示する”という行為。これって何かと似てると思いませんか?
そう、大喜利です。
与えられたお題にうまく回答する点において、大喜利と面接は共通する部分があるように思えます。また、大喜利の発想力や思考法は、企画立案など実際の仕事の現場でも活きてくるのではないでしょうか。
そこで今回は社会人と大喜利プレイヤー、両方の思考を兼ね備えたこのおふたりをお呼びしました。
オックン一般社団法人社会人お笑い協会の代表理事。大喜利イベントの主催や出演などお笑いに携わりながら、大食い系YouTuberとしても活躍。日本一年収が高いと言われる会社「キーエンス」で2半期連続全国 3 位の営業成績を残した元敏腕営業マン。
店長
WEBコンテンツ制作会社の副社長を務めながら、オモコロなどのWEBメディアにてライター活動を行う。大喜利イベント出演歴は10年以上を誇り、優勝経験も多数。原案者として、大喜利をテーマとしたカードゲームの制作にも携わる。
今回は大喜利プレイヤーとビジネスパーソン、両方の知見を持つおふたりに
- 大喜利で答えるときいつも何を考えている?
- 秀逸な回答を生み出すコツは?
といった大喜利の思考回路を伺い、後半では「あなたの短所はなんですか」など面接でよく聞かれる質問に対して、面接官に面白いと思ってもらえる回答を考えていただきました。
大喜利のコツとは
——おふたりは大喜利のスキルが日常生活や仕事に役立っていると感じる場面はありますか?
オックン:僕は初対面のアイスブレイクなど、コミュニケーション全般で活きていると感じますね。例えば、名刺をもらった瞬間どれだけ名刺をイジれるか、出身地を聞いたらうがった質問をしてどう相手にツッコませるか、そういったところで大喜利力みたいなスキルが役に立っています。
最初に相手の心を掴めば、その後のコミュニケーションはかなり円滑に進んでいくと思います。
店長:確かに。あとは日常の中の些細なことを、なんでも面白がる姿勢が身につくのは大喜利のひとつの効能ですかね。
もちろん、役立つから大喜利をやるわけではないんですが。取るに足らないことでも拾って話題に繋げられる、というのは大喜利をやってるからかなとは思いますね。
——大喜利をやってみようという人にとってはやや参入ハードルの高さも感じるのですが実際どうでしょうか。
店長:コントなどといった他のお笑いに比べるとハードルはかなり低いと思います。大喜利は、いわばこう答えるとこう反応が返ってくるのでは? という予測と、フィードバックの繰り返しなので、特別なスキルは必要ないと思っています。
——なるほど。初心者が大喜利の回答を導き出すにあたって、こういうことを知っておいたほうがいいといった考え方のコツを教えてください。
オックン:大喜利は、いわゆる連想ゲームの要素がものすごく強いと僕は考えています。まず、お題に対して思いつく要素をできる限り引っ張り出すんです。
オックン:例えば「この医者、元ラーメン屋だな。なぜそう思った?」というお題があったとします。ここからどうしていくかというと……。
オックン:医者だと“注射”や“問診”だったり、ラーメン屋だったら“硬め、濃いめ、多め”や“学生大盛り無料”だったり。こういう感じで、お題から連想されるものを書き出していくんです。あとはこれを掛け合わせていきます。
オックン:医者の要素である“注射”と、ラーメン屋の要素である“こだわりの強さ”を掛け合わせると、「朝、満足の行く薬剤が出来なかったら開院しない」というような、お互いの職業の特徴が活きた回答が導き出せるわけです。
お題が「変な医者、どんな医者?」だったら医者で書き出した要素をひねっていけばいいわけですね。僕は基本的にこういうマトリックス図が頭の中にあります。
——ここまでロジカルに解説いただくと感心しちゃって笑うの忘れちゃいますね。
店長:ちなみに、この要素にはすぐ思いつく要素とそうじゃない要素があるなと思っています。その中で、あまり連想しにくいけど繋がっている、いわば“薄皮”の要素が面白がられやすいのかなと。例えばですけどあまり面白くない回答を出しますね。
店長:「この医者、元ラーメン屋だな。なぜそう思った?」というお題に対して、「おでこに極厚のチャーシューを付けている」という回答をしました。これあんまり面白くないんですよ。
——安易に思いつきやすいものを繋げただけ、という印象を持ちますね。
店長:そうなんです。医者が頭に付けている丸い額帯鏡と、ラーメンといえばチャーシューといった安易なイメージを繋げただけなんです。だからあまり驚きと面白みがない。
もちろん、安易なものを繋げるだけで面白くなる大喜利もあるので一概にこの考え方が正しいわけではないですが、僕は要素から少し遠いところを探りながら、いかに早くちょうどいいポイントを出すか、というところを意識しています。
オックン:これは大喜利だけでなく、ビジネスの場面でも言えますね。相手が営業の方だったら安易に「ノルマキツいんですか」なんてアイスブレイクしがちですけど、全然面白くないですよね。
だから、世間的な偏見みたいな部分を増幅させて「営業ってことはやっぱ土日めちゃくちゃゴルフするんですか」とか。周縁ではなくもっと深いところをこすったほうが盛り上がると思います。受け手のツッコみやすさも大事かもしれないですね。
大喜利をする上で持っておくといい知識とは
——大喜利の思考法をお伺いしたところで、大喜利をする上で持っておいたほうがいい知識や、ウケやすくなるためのコツがあれば教えてください。
オックン:そうですね。多少力技ですがYouTubeやTik Tok、Twitterなど、SNSでよく見るあるあるは、どんなお題でも笑ってもらいやすいですね。大喜利では、芸能人ネタとか昔のドラマやアニメの深い知識ネタがよくウケますが、僕はそういうのが好きじゃなくて。
分かる人だけ分かるのも面白いんですが、どちらかというとみんなで笑えたほうがいいなと思っています。
店長:みんなふわっと知ってる(※)ネットミームとかアニメのストーリーとかは知っておいたほうがいいですね。そこまで自分が詳しくなくてもいいからうっすらした情報は知っておいたほうが役に立つと思います。
※ネット上の言葉や画像、動画などの情報が、人から人へ真似されて広がっていく様子や現象を指す。
——例えば『鬼滅の刃』を読んだことなくても主人公の名ゼリフは知っておいたほうがいい、みたいな。
店長:そうですね。逆に詳しすぎるとやっぱ熱が入っちゃってウケのバランスが取れなくなるんですよね。
オックン:わかります。詳しい物ほどウケない人はよくいますね。
店長:僕は「SASUKE」がめちゃくちゃ好きなんです。靴の営業マンの漆原って出場者がSASUKEを2回完全制覇したんですけど、1回目のときは足袋を履いててそれが反則じゃないかってプチ炎上して、なにくそ、と振り切って2回目完全制覇した話が大好きなんですけどまあウケないですね。
——なんかすごいのはわかるんですが笑いというより熱量に圧倒されました。
店長:自分はめっちゃ面白いと思っていても相手にとってそうじゃない、ということが大喜利でもビジネスでも往々にして起こるので、うっすら知ってるものだと相手の好きなものに合わせられるのかなと。大喜利では「何言ってるかわからないけど熱量で笑っちゃう」こともあるから難しいんですけど。
——誰もが知っているような話題の中の、ニッチなものを知っておくのがいいのかもしれませんね。
オックン:そうですね。ただ、ビジネスの場だと、相手がネットもアニメも通ってない可能性がある。だから、相手の業種の知識をあらかじめリサーチしておいて、専門用語などを使ったギャグを言ったりするとウケやすいかもしれません。これは面接の回答にも同じことが言えると思います。
面接の質問に大喜利回答してもらった
大喜利の考え方や活かし方を教えてもらったところで、面接の質問に大喜利的なアプローチで答えていただきたいと思います。
今回答えていただくのが面接で聞かれがちなこちらのお題。大喜利に詳しくない筆者としても、かなり難しいお題だと思うのですが……。
意に介さずスラスラとペンを走らせるおふたり。それでは答えていただきましょう!
出会ってしまったんですよ、御社に
——ロマンティック。
オックン:御社に出会ったのでもう飛び出してきた、と。実際の面接でもギリ使えるレベルかと思います。
それでは店長さんの回答。
辞めたというか、お互いが別の道に進んだというか
——めんどくさい恋愛みたいですね。
店長:物は言いようですね。あっ、もう一個思い浮かんだので回答します。
すぐ…? 体感では20年くらい働いていた気がします
——めちゃくちゃイヤだったんでしょうね。回答に大物感がある。
オックン:僕も今思いついたので出します。
前の会社がぼくを輩出しました
——ポジティブで前向き。
オックン:これって、実は一瞬Twitterでバズったネットミームなんですよね。何でもない回答ですが、薄くそこに乗っかってると面白がれるポイントができるのかなと。
次のお題。これは「資格勉強していた」とか自己研鑽的なことを言うと面接官の評価アップですが、どう答えるのか。
次は店長さんから。
御社に入ったときのイメトレをしていました
——物ぐさなように見えて前向きですね。
オックン:え! 僕もまさになんですけど……。
(イメトレしすぎて)“弊社”と言っていたのを“御社”に直しました
——コイツ怖いから採用したくないな。
オックン:こんなかぶることあるんですね。
——実際の大喜利の場でもけっこうかぶることはあるんですか?
オックン:ありますね。その場では「やられたー」みたいな顔しますけど本音はうれしいです。
それでは次のお題。けっこう意地悪な質問です。
回答はオックンさんから。
オックン:いや〜、その質問自体が謙虚に見えて、実は御社の自信の表れだと思うんです。
(そういうとこ)好きぃ
——いったん受け入れて崩す、と。
オックン:こういう人が来たら面接官も好きになっちゃうんじゃないでしょうか。
次の質問は志望理由や動機の強さを問う質問ですね。
では、引き続きオックンさん。
(そういうとこも)好きぃ
——天丼で来ましたか。
オックン:さっきと言ってること一緒じゃん、みたいな。
——こういった畳み掛けの天丼は大喜利でもよく使いますか?
オックン:けっこうライブでもありますね。テレビの「IPPONグランプリ」なんかでもハマった回答を何回もこすったりしてますね。
——面接中に、天丼を繰り広げてきたら「こいつ、見所あるな」と思われるかもしれないですね。
それでは店長さん。
社風にひかれた 将来性を感じた 家から近かった など様々
——常套句を並べつつ、最後それなのかよ、と。3つある中で最後ボケるのは語りのテクニックでもありますよね。
店長:よくある「結婚式の3つの袋」の話みたいに、最後で脱力させるとクスッと笑ってもらえるかもですね。
こちらは自分の短所をさらけ出しつつ、いかにポジティブに回答するかが重要な質問です。短所、というフィールドが広い中でどう回答するのでしょうか。
オックン:はい。僕の短所は相手に尽くしすぎてしまう性格です。先日彼女とおウチデートをしたんですけど、もう好きすぎて……。
彼女をソファから1歩も動かさずデートを成立させました
——ちょいちょい猟奇的な部分が出てきますね。
オックン:尽くしすぎてしまうのが短所ですが、御社に入ったときはそれはもうかいがいしく働きますよというアピールにもなります。
お次は店長さん。
店長:僕はこれ社会人としては致命的だと思うんですけど……。
(一緒にご飯行ったときに)先輩より高いメシでも全然注文できちゃう
——あー! めちゃくちゃいいですね。面接で短所を聞いてこれ返ってきたら面接官は一目置くと思います。
店長:生意気かわいいというか。クリティカルにイヤでもないけど何ならプラスに受け取られるかもしれません。もう一個あったんですけど……。
B型
——偏見すぎる。
残り2問。色を答えて、赤だと「情熱的」のように回答した色のイメージで自分をよく見せる回答をするのがセオリーです。大喜利のお題としてはかなり難しいのでは。
回答はオックンさんから。
オックン:これは面接でガチで使えるかもしれません。僕を色で表すと……。
紫色
オックン:紫色です。紫色は情熱の赤と、冷静の青が混ざった色です。この特徴はまさに僕を表していると思うんですけど、ちなみにこの中にもう1色含まれているのお気づきですか? 紫、むらさき、むらさ“きいろ”……というように黄色も含まれているんです。僕は黄色のように周りを明るくさせる一面もあるので、黄色が含まれた紫色だと思います。
——年寄りが好きそうな回答でいいですね。
オックン:我ながら天才だと思います。ガチで採用を勝ち取りに来ました。
次は店長さんのターン。
店長:やっぱり自分ひとりじゃなくて、いろんな人の影響を受けて今日まで歩んできました。たくさんの人のカラーを合わせた結果……。
漆黒
——周りにグレーの人が多かったんでしょうか。
オックン:僕これ好きです。カラー複合機の会社を受けるときはイエロー、シアン、マゼンタ、と答えるみたいに、業界理解を含めた回答をすると面接官にはウケやすいかもしれませんね。
これが最後の質問です。これも聞かれた側はかなり困る質問だと思いますが、大喜利マスターたちはどう答えるのか。
回答はオックンさんから。
Notギブ Butギブ人間
オックン:私はNotギブ Butギブ人間です。私はギブ、“与える”ことで幸せを感じます。社内の人であったりお客様であったりどんどん笑顔を与えていければと思います。ただし、絶対にしないギブもあります。それはギブアップです。
——もうダメだ こいつ強いわ。
オックン:このお題が一番難しかったです。誰か使ってもらいたいですね。
最後は店長さんの回答です。
店長:ズバリいきます。僕は「想い出の写真」です。
想い出の写真 絶対にとった方が良い
店長:なぜなら絶対にとった(採った)方が良いからです。
——採用!
オックン:これはうますぎる!
面接大喜利を終えて
——かなり大変だったと思いますが、面接の質問で大喜利をされてみていかがでしたか?
店長:めちゃくちゃ難しかったです。普通の回答から少しだけ外す、ということを念頭に置きましたが、面接の質問は想定されている答えが明白なので変にひねってわかりにくくなってしまっても良くないし。
オックン:面接の質問ってある程度、事前にこういう質問をする・されるとわかっている分ハードルも上がりますよね。
準備したものを持っていくと意外とウケなくて、大喜利ライブでも「こいつ考えてきたんだろうな」みたいな回答はわかっちゃうんです。だから面接ってめちゃくちゃ難しいなとあらためて思いました。
——ありがとうございます。最後におふたりから就活生や転職活動をする人にメッセージなどあれば。
店長:就活で目立つために何か特別な経歴や経験が必要なんじゃないかと考えている人もいると思います。それはそれで良いんですが、普段のバイトだったりサークル活動だったり普段の何気ないことに面白さを見出せる人のほうが評価は高いと思うんですよね。
だから、そういう日常の些細なことを面白がる習慣をつけると生活も楽しくなるし魅力的な人になれると思います。
オックン:僕の好きな言葉に、「ユーモアの第一段階は自分をあざ笑うこと」というものがあります。大喜利とか面白いものって世界を明るくしたり幸せの総量を増やすと思うんですけど、お笑いの一歩目って実は外じゃなくて内側にあるんです。
自分をいかにあざ笑うか、自分の失敗をいかに面白く話せるかがスタートだったりするんですよね。就活する人ってこれからどんどん失敗すると思います。だからこそ失敗したときに悲しいじゃなくて「おいしい」と捉えられるようになると就活で無双できるようになるはずです。
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ライター:神田匠
企画・編集:ヒャクマンボルト
撮影:中村 宗徳