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2023/08/29

ESに悩む学生が、芸人兼YouTuber・ヒロシさんに「他己PR」を考えてもらったら?

就職・転職

ES(エントリーシート)には欠かせない「自己PR」。書くことなんてない! と投げ出したくても、自分と向き合って言葉を絞り出し、なんとかして書き上げなければいけません。もしも誰かが自分の魅力を引き出して、代わりに書いてくれたらいいのに……。 そんな願いを叶えるため、さまざまな分野のスペシャリストが就活生のもとを訪れ、「自己PR」ならぬ「他己PR」を書いてもらう本連載。 第4回目は、極貧時代を経て自虐ネタで大ブレイク、近年では「キャンプ芸人」として再ブレイクと、人生の酸いも甘いも知り抜いた御年51歳のヒロシさん。果たして、どんな他己PRを考えてくれるのでしょうか※? ※「他己PR」は、ヒロシさんのアイデアをもとに、ライターが執筆する形で作成します。

ヒロシさん

1972年、熊本県生まれ。九州産業大学卒。ピン芸人として「ヒロシです……」のフレーズではじまる自虐ネタでブレイク。お笑いライブなどの傍ら2015年3月よりYouTuberとして「ヒロシちゃんねる」を配信。自ら撮影・編集したソロキャンプ動画をアップして人気を集める。著書に『働き方1.9 君も好きなことだけして生きていける』(講談社)を刊行。

 

Twitter:@hiroshidesu0214

Instagram:hiroshidesu.official

YouTube:ヒロシちゃんねる

ヒロシさんに聞く、自分に合う場所の見つけ方

まずはヒロシさんに、就職活動の思い出や自己PRについての考えを聞いてみました。

 

「騙された就職」がこじ開けたお笑いの道

——就活の思い出はありますか?

 

ヒロシさん(以下、ヒロシ):僕はずっと芸人がやりたくて、でもその勇気がなかったので、なんとなく大学に行って、なんとなく就職したんです。就活もまじめにはやりませんでした。「説明会に来てくれたらシステム手帳をプレゼント。旅費も出します」という大阪の会社があって、旅行と手帳目当てに1社だけ説明会に参加したけれど、それくらいしか覚えていないんです。

 

もちろん卒業時は内定ゼロですが、そもそも受けてすらいないからまったく傷ついていないし、不思議なことに焦ってもいなかったんですよね。「これでお笑いを始められる」と思ってたのかな。

 

——その後、どのように就職を?

 

ヒロシ:大学卒業後に福岡の実家に帰ったんですが、お笑いをやる勇気がまだ足りなくて、しばらく家で遊んでいたんです。そんな自分を見かねた親から「バイトぐらいしなさい」と母の知り合いの会社を紹介され、行ったら、そこが保険会社で。「……これ、就職じゃねえか」と。騙されましたね。履歴書なんかもテキトーなことを書いてたと思います。

 

その会社に就職して損害保険の営業を始めるんですが、自分に合わなくて、1ヶ月で行かなくなりました。毎朝起きた瞬間から頭痛がして、それが休みになると治る。こりゃだめだと思って。

 

——就職したことを後悔していますか?

 

ヒロシ:さっさとお笑いを始めればよかったとは思っています。ただ、僕は結局、みんなと同じレールにいったんは乗らないと不安なんです。就職したことで「やっぱりダメだった、自分は普通の世界では生きていけないんだ」と明確にわかったし、これがきっかけでようやくお笑いの世界に飛び込めたので、就職は必要だったと思います。

 

協力してマイナスになるくらいなら「ひとり」でやる

——その後、トリオやコンビを組んだり、一時期はホームレスになるなどの紆余曲折を経て、2003年頃、ピン芸人としてブレイクします。それ以前とはまったく違う芸風だったそうですね。

 

ヒロシ:漫才師に憧れてお笑いの世界に入ったけれど、相方はやめてしまうし、いつの間にか30歳を過ぎていて。当時は30歳を過ぎたらアウトだと思っていたので切羽詰まっていました。これがラストチャンスだと思って、見せ方もかなり考えて。

 

「ヒロシ」という芸名も覚えやすいからこうしたし、誕生日も2月14日の設定にして。かなりハードなスケジュールを組んでライブに出まくっていましたね。コンビだったらあれだけの数は出られなかったと思います。ひとりのほうが動きやすくて、自分に合っていると気付きました

 

——自分に合った動き方を見つけるコツはあるんでしょうか?

 

ヒロシ:ないと思います。人によって違うんでしょうけど、明るい人たちは、誰かと協力することで1+1が5や10になるわけじゃないですか。でも僕の場合はマイナスになってしまうんですよね。いろいろ経験して、「これも合ってない、あれも合ってない」ということがわかってくる中で、「あ、これだ」と見つけたのが「ピン芸」ないし「キャンプ」だった。だから今の会社(※ヒロシ・コーポレーション)も大きくするつもりはないし、ましてや今、ネットの時代になって、少数精鋭のほうが強烈に有利だと考えています。

 

「抜き出た人より無難な人」を雇いたい理由

——今日はヒロシさんに、就活生の魅力を引き出してもらいます。事前に自己PRを書いてきてもらいました。

ヒロシ:……「オアシス的な存在」? 社交的ってことかな? まあ、履歴書ってあまり信用していないですね。会わなきゃわからないんで。TikTokのこと書いてるけど、きっと事実はここだけですよね。

 

——この学生さんの魅力をどう引き出しますか?

 

ヒロシ:「引き出す」のは難しいですね。僕自身がどうやって自分の魅力を引き出せばいいかわかっていないので。だから「もし自分の会社で新卒採用をするとしたら」という視点になるのかな。

 

——ヒロシさんだったら何を基準に選びますか?

 

ヒロシ:普通の人がいいですね。本人からすれば人より抜き出たい気持ちがあるだろうけれど、雇う側からすると、やっぱり無難な人をチョイスしますよね。要はマッチングなんですよ。はっきり言って、面接官だってそんなに人生経験があるわけじゃないのに、人を見抜けるわけないじゃないですか。だからいろいろと良いことを書くのではなく、自分は何ができるのか、わかりやすく書いてくれたほうが興味を引かれますよね

 

——なるほど、それは重要なポイントかもしれません。どうしても過剰に自分をアピールしがちだけれど、本当に大切なのはそこではないと。

 

その自己PR、かっこつけてませんか?

今回ヒロシさんに「他己PR」を考えてもらうのは、こちらの就活生。

 

長谷川 諒さん

大学4年生。東京都出身。趣味はファッション研究、アクセサリー作り。小学校から高校までサッカー部で、特技はサッカーのコーチング、ファッションコーディネート。日本化粧品検定3級。

 

ここからは、ヒロシさんがインタビュアーになり、本人も気付いていない長谷川さんの魅力を掘り下げます。

ヒロシ:長谷川さんは現在、就活中なんですよね?

 

長谷川さん(以下、長谷川):1社から内定をいただいたところです。でもその企業から「もっと他の場所も見て、改めてうちがいいと思ったら選んで」と言われているので、まだ続けています。

 

ヒロシ:自己PRはこの文章で出したんですか? どんな会社ですか?

 

長谷川:その文章で出して、某アパレル大手企業から内定をいただきました。それと、今は芸能事務所に所属していて、モデルやタレント活動をしています

 

ヒロシ:アパレルでもエンタメでもいいんだけど、長谷川さんは最終的にどうなりたいの?

 

長谷川:最終的なビジョンは「人々を幸せにすること」で、自分と関わってくれた方々を幸せにしたいんです。アパレルなら、服や接客を通して幸せを与えられますし、エンタメ業界なら、自分を見てもらうことで幸せを感じていただけたらと思っていて。幸せを与えられることであれば、なんでも全力でやりたいんです!

ヒロシ:……人に幸せを与えたいなら、ボランティアったらどう?

長谷川:えっ!?

 

ヒロシ:いや、そういうことじゃないってわかってるよ。つまり、本当は、本当の本当を正直に言ったら、自分が目立ちたいわけじゃん?

 

長谷川:そう……ですね、はい。

ヒロシ:でしょ? それは隠さないほうがいいと思う。モテたいとか、金が欲しいとか、目立ちたいとか誰かを見返したいとか、もっと欲望をストレートに伝えたほうがグッとくる気がするな

 

もちろんそれを下品だと思う人もいるかもしれないけれど、僕だったら「そんなにモテたいのか、どうしてだろう」とか「周囲にバカにされてきたから、見返すために売れたいのか」とか、そういうふうに思うよね。

 

長谷川:なるほど……。

自分の本当の欲望と向き合おう

 

ヒロシ:僕が長谷川さんの自己PRを見て気になったのは、TikTok LIVEのところ。TikTokで人気があるということ? 不特定多数の相談に乗っているんですか? 僕はここに引かれました。

 

長谷川:ありがとうございます! 内定をいただいた会社でもTikTok LIVEのことを聞かれたんです。人気というほどではないんですが、始めて6ヶ月くらいで、フォロワーは若い女性を中心に1,500人くらいです。

 

内容は、「彼氏と別れた」とか、「彼氏が〇〇で困っている」とか、「一目惚れしたけどその後どうすればいいですか」とか。それに対して、いち男性として「自分はこう思います」と意見を言う感じです。これまで2,000人以上の人の話を聞いて、中にはタレントさんもいました

ヒロシ:なるほどね。「YouTubeで〇〇人の登録者数がいます」と言われたら、もう即戦力じゃんと思われる時代だから、アパレル企業だって、こういうインフルエンサーみたいな人がいたほうが有利だと思うんだよね。そもそも芸能活動は、いつから、なぜやろうと思ったの?

 

長谷川:きっかけは、大学に入って服にハマってから、周りから「おしゃれだね」と言われるようになって。小学校から高校まで12年間サッカーをやっていたんですが、その次にやりたかった芸能活動もやってみたくなって、オーディションを受けました。

 

ヒロシ:サッカーやってた時にちやほやされなかった? 顔もいいし、その頃からモテてそうだけど。俺とは違って、ちやほやされ慣れてるんじゃないかなあ。

 

長谷川:それは小学校までなんです。5年生で福岡に引っ越して、福岡県の強豪チームに所属しました。チームではレギュラーで、6年生の頃は県大会ではベスト16に進出。フットサルでは九州大会に出たこともあります。

 

中学で東京に戻ってクラブチームに入った時、体格的に限界を感じて。高校はサッカー推薦で進学したんですが、強い高校だったので、Aチームには入れなくて。

 

ヒロシ:ということは、小学生の頃はサッカーでエリートになれそうだったけれど、中高で挫折したんだね。そこでファッションに目覚めて、自分が目立てる場所を見つけたんだ。

 

長谷川:そうかもしれません……!

 

超実用的! ヒロシさん流「他己PR」

こうして、ヒロシさんによるインタビューが無事終了。ここからは、インタビュー後にヒロシさんからもらったアイデアをもとに、ライターが長谷川さんの「他己PR」を書き上げます。

 

ルールは2つ。「字数は400字以内」「長谷川さんになりきったつもりで書く」。これさえ守れば、書式は一切問いません。

 

果たして、ヒロシさんはどんな他己PRを考えてくれたのでしょうか?

 

・・・

 

ヒロシさん作・長谷川さんの「他己PR」

ヒロシさんの考えてくれた他己PRは、とにかくTikTokを軸にした「事実」にフォーカス。400字の中に即戦力と感じてもらえるポイントが詰まった、実用性抜群の他己PRが完成しました。

 

ヒロシ:学生時代の活動とかって言われてもよくわからないけれど、TikTokの実績は一目瞭然じゃないですか。発信力があることをわかりやすく表現するのがいい気がしましたね。タレント用の履歴書を一般の会社用にアレンジしたイメージです。

 

長谷川さんは、かわいい顔をして、いいものを持っていて、僕がいちいち何か言わなくても、自分のこともやるべきこともわかっている子でしたね。モテるんだろうし。いいなあ。

 

彼の歳の頃の僕は、「ヒロシくん、好きよ」と、自分でテープレコーダーに録音して聴いていました……。

 

ヒロシです……ヒロシです……ヒロシです……。

「他己PR」を読んでみて……

 

長谷川:ヒロシさんが考えてくださった自己PRは、見やすいし、わかりやすいし、「この人と面接をして、この人について知りたい」と思える自己PRになっていました。言いたいことは同じであるのに、書き方や言葉選びでこのくらい違ってくるのだと知ることが出来ました。自己PRは、自分をアピールするための場所。強気で書くことの大切さを知ることが出来ました。ヒロシさん、この度は貴重なお時間ありがとうございました!

 

・・・

 

今回ヒロシさんに考えてもらった「他己PR」は、あくまでも一つの作品ですが、自分の魅力の掘り上げ方など、就活に生かせるヒントが詰まっているはず。自己PR執筆に行き詰まった時には、参考になるかも?

 

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(企画:株式会社ライスカレー / 編集:株式会社エクスライト / 取材・執筆: 山田宗太朗 / 写真撮影:高島啓行)

 

 

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