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玉掛けとは?具体的な作業内容と必要資格・技能講習を紹介!
工場などの仕事の募集内容に、「玉掛け」という作業が入っていることがあります。聞き慣れない言葉であり、どんな作業か想像がつきにくい方も多いのではないでしょうか?
ここでは玉掛け作業について、詳しい作業内容や必要な資格・技能講習について詳しく解説します。
玉掛けとは?
玉掛けとは、工場や建設現場などで重い荷物をクレーンで持ち上げる際に、フックに荷物を掛けたり外したりする作業のことです。作業に携わるには、必ず資格(特別教育・技能講習の受講)が必要になります。
資格が必要である理由は、とても重い荷物を高所に持ち上げることは、どうしても危険がともなうからです。作業に使用するロープの強度や、長さ、クレーンで持ち上げた時の角度やバランスが正しいかなど、作業をする上で安全性を保つためには知識や経験は不可欠です。講習で知識や実技をしっかり学んで、安全に作業をしましょう。
クレーン運転との関係は?
玉掛けは「クレーン玉掛け」という言葉があるように、クレーンと密接に関係する作業です。資格取得のための講習でも、クレーンについて学びます。
クレーンを運転するためには専用の資格が必要になりますが、玉掛けと一緒に取得しておけば現場で1人で作業することもできますし、クレーン運転の知識や経験があるほうが玉掛け作業の理解も深まりますので、どちらも取得する人は少なくありません。
>>【関連記事】クレーン免許の種類と難易度・取得費用|ホイストクレーン(天井クレーン)は資格がいらない?
玉掛けの由来
なぜ玉掛けと呼ばれるようになったか、はっきりとした由来は定かではありません。有力な説として、掛け軸を掛ける際に琥珀(こはく)や瑪瑙(めのう)などの宝石(=玉)を使ったことから、これと似た作業であるフックに荷物を掛けることを「玉掛け」と呼ぶようになった、といわれています。
掛け軸もバランスよく掛けることで美しさはもちろん、地震などに対する耐久力も変わるので、本当に近い作業なのかもしれませんね。
現場の安全を守るために必要な作業
玉掛けは、現場の安全を守るために必要な作業です。なぜなら、先述したように重い荷物をクレーンで持ち上げるため、適切な掛け方をしないと落下する恐れがあるためです。一歩間違えると作業員に怪我を負わせたり、最悪な場合は命に関わる事故を招いたりします。このようなトラブルを未然に防ぐためには、正しく玉掛けを行うことが大切です。
玉掛けの主な方法
以下では、玉掛けの主な方法をご紹介します。
フックに掛ける方法
フックに掛ける方法は、主に「目掛け」「半掛け」「あだ巻き掛け」「肩掛け」の4種類です。その中でも、「目掛け」がもっとも標準的で安全な掛け方とされています。
そんな「目掛け」をはじめとするフックに掛ける方法については、後ほど詳しくご紹介します。
つり荷に掛ける方法
つり荷に掛ける方法は、主に「目掛け」「半掛け」「目通し」「あだ巻き掛け」の4種類です。その中でも一般的によく用いられているのは「半掛け」であり、比較的単純な掛け方となっています。
つり荷に掛ける方法についても後ほど詳しくご紹介しますので、あわせてご覧ください。
具体的な作業内容は?
玉掛けは、クレーンのフックに荷物を縛った紐を掛ける場合と、フックに結びつけた紐を荷物に掛ける場合の2種類があります。
どちらの場合も重さや形によって掛け方を変えます。また、掛け方だけではなく、使用する用具もつり上げる荷物によって使い分けなければなりません。そのため、玉掛けに必要な用具にくわえて、フックに掛ける方法・つり荷に掛ける方法については、あらかじめ押さえておくようにしましょう。
用具
玉掛けに使用する用具は、以下のとおりです。
ワイヤロープ
玉掛けで使用するワイヤロープは、「クレーン等安全規則」の第213条により「安全係数6以上」でなければならないと定められています。また同規則の第219条では、エンドレスでないワイヤロープに関して、両端にフック・シャックル・リングまたはアイを備えたものでなければならないと義務付けられています。このアイというのは、ワイヤロープの端を輪(目の型)にしたものです。このアイにフックを掛け、吊ることが多くあります。
なお、ワイヤロープの端末加工は、「アイスプライス(編み込み)加工」「圧縮止め(ロック)加工」の2種類です。アイスプライス(編み込み)加工は、ストランドをワイヤロープの間に差し込んで両端にアイを作ります。一方で、圧縮止め(ロック)加工はアイの首部に専用の金具で留める方法です。金具を機械で圧縮するので、短時間での加工が実現します。
参照:
クレーン等安全規則 第八章 玉掛け(第二百十三条-第二百二十二条)|中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター
ベルトスリング
ベルトスリングとは、(合成繊維でできた平らなベルト状の紐)のことを指します。柔軟性に優れているので扱いやすく、さらに軽さもあるため「効率よく作業したい」という目的で選ぶことも少なくありません。しかし、ベルトスリングは熱に弱く、鋭利な荷物を取り扱う際には保護具を使用する必要があります。というのも、ベルトスリングは繊維でできているので、傷ついてしまうと切れて荷物を落としてしまう危険性があるのです。そのためベルトスリングに関しては、荷物によっては使用を避けたり保護具を併用したりして、正しく使っていく必要があります。
フックに掛ける方法
フックに掛ける方法は全部で4種類あり、それぞれの特徴や長所・短所は以下のとおりです。
目掛け
目掛けは、フックにワイヤロープのアイを掛ける方法です。ワイヤロープを1本使用する場合は「1本づり」、ワイヤロープの数が増えるとそれに伴い「2本づり」「4本づり」と表現します。
先述したように、目掛けはもっとも標準で「安全な掛け方」という長所があります。その一方で「非対称の荷物には適さない」という短所があるため、荷物の形によって使い分けることが大切です。
半掛け
半掛けは、ワイヤロープのアイをフックに掛けない方法です。目掛け同様、使用するワイヤロープの数にあわせて、「2本づり」「6本づり」などと表現します。
そんな半掛けの長所には、「荷物の側につり手があるものや定型的な荷物に適している」という点があげられます。反対に、短所は「重心が中心にない荷物や重心の位置が高い荷物には適さない」です。荷振れが起こるとワイヤロープが滑り落下してしまう恐れがあるので、注意しましょう。
あだ巻き掛け
あだ巻き掛けは、フックにワイヤロープを1回転させて巻きつける方法です。半掛けと少し似ていますが、半掛けの場合はフックにワイヤロープを巻きつけないので、そこが大きな違いといえます。
あだ巻き掛けの長所は「ワイヤロープが滑るのを防げること」です。半掛けの場合、フックにワイヤロープを巻きつけていないので滑ってしまうことがあります。その点、あだ巻き掛けであればワイヤロープを1回転させて巻きつけているので、滑るのを防ぐことが可能です。短所には「ワイヤロープに癖がつく」という点があげられます。玉掛け作業が終わったあとは、ワイヤロープを修正しなければなりません。
肩掛け
肩掛けは、フックの肩部分にワイヤロープを巻きつける方法です。基本的に1本だけの対応になるので、2本以上かけることはほとんどありません。
肩掛けの長所は、あだ巻き掛けと違って「ワイヤロープに癖がつきにくい」という点です。玉掛け作業が終わったあとにワイヤロープを修正する手間を省くことができます。その一方で、短所には「両フックに掛けられるが重なりが起きてしまう」という点があげられます。ワイヤロープが重なると擦れてしまい、荷物が落下する危険性があるので注意しなければなりません。
つり荷に掛ける方法
つり荷に掛ける方法も全部で4種類あり、それぞれの特徴や長所・短所は以下のとおりです。
目掛け
目掛けは、荷物のつり手にワイヤロープのアイを掛ける方法です。「扱いやすく便利」「バランスの取れた荷物に適している」といった長所がある一方で、「ワイヤロープが緩むと荷物が落下する危険性がある」という短所もあります。なお、つり荷に掛ける方法が目掛けのとき、フックに掛ける方法が「半掛け」だと危険を伴う可能性があるため、あらかじめ確認することが大切です。
半掛け
半掛けは、ワイヤロープを荷物に回して掛ける方法です。つり荷に掛ける方法の中ではもっとも単純なため、「扱いやすい」という点が長所になります。一方で、半掛けの短所には「つり角度が大きくなると不安定になる」という点があげられます。つり角度が大きいとワイヤロープが中心に寄ってきてしまうので、荷物が滑らないよう工夫することが大切です。
目通し(絞り)
目通し(絞り)は、ワイヤロープで荷物を目通しして絞る掛け方です。目通しの長所は、「つり荷とワイヤロープの滑りを防げること」。荷物を絞り込むことによって摩擦力が増すので、滑りにくくすることができます。その一方で「絞り込まれた部分のワイヤロープが傷む」という短所もあります。ワイヤロープが傷むと強度が失われる危険性もあるので、様子を見て新品に変更しましょう。
あだ巻き掛け
あだ巻き掛けは、荷物にワイヤロープを1回転させて巻きつける掛け方です。「滑りにくい」という長所があるため、長尺物の荷物にも適した掛け方といえます。一方で、短所には「手間が発生する」という点があげられます。掛ける際も外す際も荷物の下へワイヤロープを2回通す必要があるため、煩わしく感じることがあるかもしれません。
作業をするのに資格は必要!取得するにはどうすればいい?
玉掛け作業は非常に重い荷物を扱い、危険が伴うため、必ず資格が必要になります。資格の取得には決められた講習を受けなければなりません。受講資格は特になく、18歳以上の方なら誰でも受けることができます。
扱う荷物の重量が1t未満か1t以上かによって必要な資格が変わりますので、詳しく解説します。
1t未満の荷物の玉掛け作業には「玉掛け特別教育」
1t未満の荷物を扱う玉掛け作業には、各事業者や教習所で行われる「玉掛け特別教育」の講習を受けなければなりません。
講習は学科に5時間、実技に4時間、計9時間が必要とされます。試験は特になく、講習を終了した方には修了証が発行されて、作業に従事することができます。
教習所などで受講する場合は受講料を支払う必要があります。金額はテキスト込で15,000円〜程度とされることが多いようです。
1t以上の荷物の玉掛け作業には「玉掛け技能講習」
1t以上の荷物を扱う玉掛け作業には、各都道府県の労働局に登録した事業者のもとで、労働安全衛生法に基づく「玉掛け技能講習」を受講しなければなりません。
講習は学科に12時間、実技に7時間、計19時間が必要とされます。すでに「玉掛け特別教育」の修了証を持っている方や、クレーンの運転免許を持っている方は学科や実技がある程度免除されます。
「玉掛け特別教育」と同じく試験は特になく、講習を終了した方には修了証が発行されて、作業に従事することができます。
講習の料金はテキスト込で20,000円〜程度とされることが多いようです。
どれくらい稼げる?
資格が必要であり、危険を伴う作業ですので、給料も高くなる傾向があります。時給であれば1,300〜1,800円。日給なら1万〜3万円と、繁忙期の限定的な日数であればかなり高い金額になることもあるようです(「ニッケンで発見」編集部調べ)。
くわえて、平均月収と月収の傾向は以下のようになっています。
平均月収
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によると、平成27年度の所定内給与額は「285,500円」です。そして、同年の年間賞与その他特別給与額は「488,400円」となっています。
玉掛け作業員とほかの職種の所定内給与額を比較すると、以下のようになります。
職種 | 所定内給与額 |
クレーン運転工 | 291,700円 |
玉掛け作業員 | 285,500円 |
機械製図工 | 284,900円 |
建設機械運転工 | 261,700円 |
ボイラー工 | 251,600円 |
クレーン運転工より少し低いものの、そのほかの職種よりは高いほうだとわかります。
月収の傾向
同調査データによると、玉掛け作業員の月収の傾向は以下のとおりです。
平成25年 | 平成26年 | 平成27年 |
249,800円 | 253,700円 | 285,500円 |
平成25年から平成27年にかけて、月収が増加傾向にあることがわかります。それにより、玉掛け作業員の仕事は「給与が大幅に下がってしまう心配はほとんどない」と考えられます。
参照:
どんな人が向いている?
玉掛けは単に荷物をクレーンのフックに掛けたり外したりする作業ではありますが、わずかなズレやゆるみによって荷物が傾いたり揺れたりするととても危険な状態になります。
そのため、注意深さや慎重さはもちろんですが、常に完璧を心がけるプロ意識を持って作業できる方が向いている仕事と言えるでしょう。そのような方には仲間の作業員も安心して仕事を任せられるので心から褒めてくれます。とてもやりがいのある仕事なのです。
作業環境は?
工場で重い資材をクレーンで持ち上げる作業の場合は、屋内での作業になります。
建設現場で行われることも多いため、その場合は屋外での作業になります。
基本的に危険な作業となるため、ヘルメットや安全靴の着用は必須です。
アルバイトや派遣社員はどれくらいいる?
現場には短期間のアルバイトや派遣社員だけでなく、日雇いの方も多いのが特徴的な仕事です。それは、日雇いの募集は繁忙期に一時的に日給が高くなることがあるため、そうした求人を渡り歩く方がいるためです。
正社員の求人もそれなりにあり、現場では期間従業員との割合は半々くらいが多いようです。正社員を雇用しておけば作業のノウハウが残るので、経営者としても安心なのです。資格を持ち、経験を積めば派遣社員のような期間従業員でも正社員に登用されることもあります。いずれにせよ、講習だけで取得できる資格ですので機会を見て取得しておけば、就職や転職において有利に役立つでしょう。
まとめ
玉掛けは現場の安全を確保するために必要な、とてもやりがいのある仕事です。資格が必須ですので、しっかり講習を受けて、決して油断せず細心の注意を払って作業を行うようにしましょう。
監修/細原敏之
高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。
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