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2019/09/27

今求められている「ものづくりの仕事」とは? その意外な実態を解説!

モノづくり

日本では、「ものづくり大国」として世界から高い評価を受けてきました。ものづくりの現場は「キツイ・汚い・危険」の3Kイメージから敬遠されがちですが、実はニーズが高く将来性のあるのが、ものづくりの仕事なのです。

なかでも製造業は、現在GDP・就労人口ともに国内生産の約2割を占める、サービス業に次ぐ主力産業であり、今後はよりいっそうの需要が見込まれます。 ものづくりの仕事の実態について、その種類や待遇、魅力などに迫ります。

ものづくりってどんな仕事?種類や特徴を紹介

ものづくりの仕事と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、工場内での製造作業や、アトリエでの職人作業ではないでしょうか。実は、ものづくりの仕事は多岐にわたります。ものづくりの仕事の種類や特徴について解説します。

 

業種は100種類以上

ものづくりの仕事は、機械製造やプラスチック組み立てなどの「製造系」から、パティシエや陶芸職人、家具職人といった「職人系」、画家やイラストレーターなどの「芸術系」、プログラマーやCADオペレーターといった「IT系」、電気技術者、生産・品質管理技術者など「技術系」までさまざまな種類があります。広義では、研究職もものづくりの仕事に分類できるでしょう。ものをつくる仕事すべてをものづくりとするならば、その種類は100を超えます。

また、機械製造のなかでも品質管理や設計、研究開発など部門別に分かれるように、同一業種内で複数の職種が存在します。したがって、業務内容は実に多様です。

 

将来性のある仕事

ものづくりの仕事は高い需要のある一方、それに見合う労働力が確保できていないのが現状です。

経済産業省が実施したアンケートによると、国内生産の維持・強化のために改善を期待する環境要因の1位、2位の結果はそれぞれ「工場労働者の確保」、「高度技術者・熟練技能者の確保」でした。ものづくり業界における人手不足感をうかがい知ることができます。

人材不足の背景には、いくつかの要因が考えられます。

まずは、世間がものづくりの仕事に抱く「3K」のマイナスイメージです。

一般的に、ものづくり業は力仕事や立ちっぱなしでおこなう作業も多く(キツイ)、油や塗料で汚れるのは日常茶飯事です(汚い)。また、大がかりな加工機や切断機を使用する工場では、常に事故のリスクと隣り合わせの作業となります(危険)。多くの人がこのように「ものづくりの仕事=労働環境が劣悪」と考えているため、なかなか就業者が増えないというわけです。

次に、高齢化の進行です。

日本では現在高齢化が進み、10年後には人口の3割を65歳以上の高齢者が占めるようになるといわれています。そして、それはすなわち生産年齢人口、ものづくり人口の減少を意味するのです。後継者不足も、ものづくりの人材不足の一因として挙げられます。

このような人材不足は日本社会にとって大きな課題ですが、労働者にとってはメリットとしてとらえることもできます。ニーズの高いスキルを身につければ、引く手あまたの人材になれるのです。

 

国からの支援もある

こうした人材不足の状況を受け、国も積極的にサポートしています。中小企業庁は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を交付しており、一定の要件を満たせば補助金を受け取ることが可能です。

また、厚生労働省が平成25年度から開始した「ものづくりマイスター制度(若年技能者人材育成支援等事業)」では、地域や学校などと連携し、技術の継承・後継者育成を支援しています。ほかには職業訓練も実施しています。ものづくりの仕事は国も力を入れている前途有望な職種なのです。

 

意欲が重視される傾向にある

ものづくりの仕事では、従業員を一から育てる方針のところも多く、採用についても意欲が重視される傾向にあります。そのため、「技術を身につけたい」という思いがあれば、学歴や経験に関係なくはじめられるのも特徴です。

実際、他職種から転職する人も大勢いますし、未経験可・学歴不問の求人も少なくありません。

 

女性でも活躍できる

ものづくりの仕事は、力仕事ばかりではなく女性が活躍できる場面も多々あります。たとえば、自動車製造における部品の組み立ては手先の器用さが要求されるため、むしろ女性に向いているといえるでしょう。

また、ものづくりの仕事というと地味なイメージを抱かれがちですが、ガラス工芸品や雑貨づくりなどおしゃれな仕事も数多く存在します。

今がチャンスのとき! ものづくり業界への転職の現状

ものづくり業界への就職は今が好機です。慢性的な人手不足はもちろん、社会的ニーズからみても、今後ものづくりの仕事にはさらなる可能性が期待できます。

 

機械製造、デジタル人材が特に求められている

特に需要が大きいのが、機械製造やIT分野です。

近い将来、あらゆる場面でIoTやITを利活用する時代がやってきます。超高齢化社会を迎える日本では、介護ロボやAIベッドなどデジタル介護関連品のニーズが高まるでしょう。

つまり、そうした製品づくりに必要な機械製造の働き手や、AIやITに長けた「デジタル人材」に大きな需要が見込まれるのです。

 

建築・土木のニーズも高い

建築・土木業界のニーズも見逃せません。

日本は大震災を経験した後、残念ながらいまだ十分な復興には至っておらず、施設・建物の建築需要はまだまだ高いのが現状です。2020年には東京オリンピックも控えているため、インフラ整備も必要です。建築・土木の人材は、今まさに求められているのです。

 

未経験でも可能

「そうはいっても、未経験では難しそう……」と考える人もいることでしょう。特にAI・IT分野は専門性が高く、しり込みしてしまうかもしれません。けれども、心配は無用です。

前述のように、ものづくり業界は社内教育に力を入れているところが多く、AI・IT分野に関しても未経験からはじめられるからです。

年収1,000万超えも可能?ものづくりの給与実態

ものづくりの仕事は総じて収入が低いと思っている人はとても多いです。しかし、実際にはそうとはいいきれません。

 

「ものづくりの仕事=低収入」は誤解!

製造業の平均年収は約374万円。他職種とくらべて、とりたてて低いわけではありません。

そもそも、ものづくりの職場は非正規労働者の比率が高い傾向にあります。一般的に非正規労働者は正規労働者よりも賃金が低いため、平均年収は低く算出されてしまうというわけです。

 

条件によっては1,000万超えも

さらに個人差はあれど、生産管理責任者や工場長クラスになると、かなり収入が上がります。条件次第では年収1,000万円も夢ではないでしょう。もちろん、資格やスキルを習得すれば相応の給与アップが望めます。

実はこんなにメリットが! ものづくりの魅力とは

ものづくりの仕事は「単調で退屈そう」「やりがいがなさそう」など、面白みに欠けると思われているふしがあります。しかし現実には複雑な業務もあり、魅力も多い職種です。

 

思考力が求められる作業も多い

たとえば製造業では、流れ作業など単純労働がイメージされがちです。

しかし実際には、製品基準をクリアするために素材変更や設計の見直しを行うなど、頭を使う場面も多々あり、仕事としての面白みは他職種に負けていません。

 

間接的に社会に貢献できる

やりがいを感じるのは、自分が携わった製品が使われているのを実際に目にしたときでしょう。特に、高い評価を得ている製品の場合には、社会への間接的な貢献を実感できると同時に、「がんばってきてよかった」という思いがこみあげてくるはずです。

 

ワークライフバランスも安定させやすい

ものづくりの仕事のメリットとして見過ごされがちなのは、「規則的な就業時間」です。

一般消費者を相手にするBtoCの業種では、相手にあわせて働くことになります。顧客のクレームや要望に都度対応せねばならず、就業時間も不規則になりがちです。

一方ものづくりの仕事は、基本的に企業相手のBtoB。もちろん残業もありますが、基本的には就業時間は一定なので予定を立てやすく、ワークライフバランスも安定させやすいといえます。子育てとの両立も、余裕をもって実現可能です。

AIが発展してもものづくりはなくならない!?

科学技術が目覚ましい発展を見せる昨今では、「10年後にはなくなる職業」と題して、近い将来ITやAIに雇用を奪われる業種についての議論が多く交わされています。そこでは必ずといっていいほど、ものづくりの仕事も将来なくなる職業の側に含まれます。

本当に、ものづくりの仕事はなくなってしまうのでしょうか?

 

ITやAIは「造る」ことはできても「創る」ことはできない

たしかにものづくりの仕事の多くは、近い将来、AIに代替されるリスクがあります。

しかしAIは、「あらかじめプログラミングされた動作」を「プログラムどおり」に実行することはできても、「クリエイティブな作業」を「自発的」に行うことはできないのです。

たとえば精密機器の製造では、常にPDCAサイクルを回す必要があるため「工夫」や「思考」が求められます。そうなると、事前に学習した動作しかできないAIに替わりは務まりません。

自動車の製造にしても、同じことがいえます。

自動車の設計そのものはコンピュータで行われますが、ボディのモデルをつくるのは「人」。モデラーと呼ばれる職人が手作業で、クレイ(粘土)を盛っては削りを繰り返してつくります。

つまり、創造力を持たないIT・AIには限界があるために、ものづくりの仕事の雇用が完全に奪われる可能性は低いというわけです。

手に職がつけば将来に備えられる

誰もが常に失業リスクにさらされる現代において、「手に職」は資産となります。一筋縄(ひとすじなわ)ではいかない厳しい側面もありますが、手に職をつければいざというときに備えることが可能です。その意味で、ものづくりの仕事は将来性のある職種といえるのです。