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2021/08/17

半導体工場ではどんな仕事をする?きつい?職場環境や年収について解説

モノづくり

現代の電子機器に欠かせない半導体は、日本でも多くの製造企業や工場があり、市場規模も大きいため、常に人材を募集しています。しかし日常生活では半導体を目にする機会はあまりないため、どんな仕事をするのかイメージがわかない方も多いでしょう。
そこでこちらでは、半導体製造工場の作業内容や魅力、年収などについて詳しく解説します。半導体工場の仕事が向いている人の特徴も紹介しているので、ぜひチェックしてください。

半導体とは?

半導体とは、電気を通す物質(導体=金属など)と、通さない物質(絶縁体=ゴムなど)との中間に位置する物質のことです。温度や光、不純物によって電気抵抗率をコントロールできるので、ダイオードやトランジスタといった半導体素子(電子部品)をつくるうえで欠かせません。素材となる物質はシリコンが有名で、ほとんどの半導体製品にはシリコンが使用されています。

 

半導体は、本来はシリコンなどの物質をさす言葉でしたが、現在は電子部品やそれらを集積したIC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)の総称として使われるようになっています。

半導体製造工場と言ったときは、ICやLSIなどの電子部品を製造する工場と理解しておくと良いでしょう。

半導体製造工場ではどんな仕事をする?

半導体製造工場の仕事は、主に「マシンオペレーター」「組立」「検査・検品」「運搬・出荷作業」の4つに大別できます。

 

マシンオペレーター

マシンオペレーターとは、機械を操作したり材料を管理したりする仕事です。着手するにあたり、機械の専門知識は必須というわけではありません。先輩スタッフから指導を受けてマニュアルどおりに操作すれば対応できるので、知識のない方も携わることができます。

 

組立

組立はその名のとおり、半導体を組み立てる仕事です。半導体製造装置を使って取り組みますが、マシンオペレーターと同じく機械の専門知識は必要なく、指導・マニュアルをもとに対応します。

このほか、組立には「装置製造組立」もあり、これは半導体製造で使用する装置を組み立てる仕事です。ドライバーやレンチなどの工具を使用し、設計書や指示に従って装置を組み立てていきます。

 

検査・検品

検査・検品は、製品に問題がないかを確認する仕事です。目視での確認は困難なため機械や専用の顕微鏡を使用し、設計書や指示に従って確認をしていきます。

 

運搬・出荷作業

運搬・出荷作業は、半導体を運び出荷する仕事です。運搬作業は、次の工程に進む際に半導体を運ぶことを指し、検査担当者がいくつかまとめて運びます。出荷作業とは、すべての検査を終えて完成した半導体を出荷できるよう準備すること。完成した半導体はすでに保護されているので、梱包・ピッキングすれば完了です。

半導体を製造する工程

半導体を製造する工程は非常に細かく、10種類以上に分かれています。しかもつくる製品によってはその工程を何度も繰り返して、大きくて複雑な回路にしていきます。

 

マスク製造

透明なガラス基板上に半導体の設計図を描き、素材に転写するためのフォトマスク(原版盤)をつくります。

 

ウェーハ製造

シリコンの塊であるインゴットをワイヤーソーで薄く切断して、ウェーハを作ります。次に研磨パッドと研磨剤を使用して、ウェーハの表面にある凸凹を磨き上げます。なお、工場によってはインゴットの製造も工程に含む場合もあります。

 

前工程

マスク製造やウェーハ製造も含める場合もありますが、前工程とはウェーハ上に半導体チップをつくる工程です。チップの大きさにもよりますが、一枚のウェーハから100個以上のチップをつくることもあります。前工程で行われる作業は、以下のとおりです。

 

作業 作業内容
ウェーハ表面の酸化 ウェーハの表面を酸化させるため、高温の酸素に晒します。
薄膜形成 ウェーハの表面に、回路の素材となるアルミニウムや酸化シリコンの薄膜形成を行います。薄膜の形成方法には、特殊なガスを使って化学反応を起こし生成された分子の層で膜をつける「CVD法」、ウェーハを加熱して酸化シリコンの膜をつける「熱酸化」などが挙げられます。
フォトレジスト塗布 フォトレジスト(感光性の液状樹脂)をウェーハの表面に均一になるよう塗布します。
露光・現像 フォトマスクと縮小レンズに光を照射し、ウェーハ表面に回路パターンを転写します。そのあと、現像液を使って前の工程で塗布したフォトレジストの不要な部分を取り除きます。
エッチング フッ酸やリン酸などを使い、露出した酸化膜・薄膜を除去します。
レジスト剥離・洗浄 残ったフォトレジストを剥離し、薬液を使って不純物を除去します。
イオン注入 ウェーハにボロンやリンなどの不純物イオンを注入し、半導体の特性を持たせます。
平坦化 ウェーハ表面を研磨して凹凸を平坦化します。
電極形成 ウェーハに電極配線用の金属を埋め込みます。
ウェーハ検査 ウェーハに形成したチップにプローブ(針)を接触させて、電気に問題がないか検査します。

 

製品によってはこの工程を何度も繰り返し、多層化した複雑なチップをつくります。

 

後工程

ウェーハからチップを切断して、製品として組み立てる工程です。後工程で行われる作業は、以下のとおりです。

 

作業 作業内容
ダイシング さまざまな産業において使用される、基礎素材(鉄・木材・紙・石油加工品など)を生産・加工する仕事。
ワイヤーボンディング 精密機器や電化製品、航空機などの加工製品をつくる仕事。
モールディング その名のとおり、生活に関係する製品を製造する仕事。具体的には、飲食料品や家具などがあげられます。
最終検査 温度・電圧や外観構造検査などを行い、異常がないか検査します。

 

このようにたくさんの工程がありますが、非常に微細な作業となるので、実際に作業を行うのは機械がほとんどです。

人の作業としては、機械のオペレーターや製品にエラーがないかを検査する仕事などがメインになります。エラーが見つかったら、上長に報告して指示通りに作業をします。

 

半導体工場の勤務スケジュール

時間 スケジュール
7:45 朝礼
8:00 業務開始
10:30~10:40 10分休憩
10:40 業務再開
12:00~13:00 1時間のお昼休憩
13:00 業務再開
15:00~15:10 10分休憩
15:10 業務再開
17:00 片付けをして退社

 

半導体工場では一日中同じ業務を行うこともあれば、午前と午後で別の業務を行うこともあります。工場によってスケジュールは異なるので、入社前に確認しておきましょう。また、仕事の時間も工場によって変わるので、上述した勤務スケジュールはあくまでも参考として捉えておいてください。

半導体工場の仕事の魅力とは?

半導体工場の仕事の魅力には、主に以下の5つが挙げられます。

 

給料が高くて稼げる

半導体を製造する会社はどこも大きな会社ですので、社員の平均年収も高く(700万〜1000万円/「ニッケンで発見」編集部調べ)、派遣社員や期間従業員の時給も高い傾向にあります。

繊細な電子機器を扱うため神経を使う仕事ではありますが、その分稼げるのでやりがいのある仕事とえるでしょう。

 

肉体労働がほとんどない

半導体工場での主な仕事は「機械の管理」と「製品の検査」なので、肉体労働はほとんどありません。部品を運ぶ作業もありますが、重いものを持ことはほとんどなく、前の工程から送られてくる製品を機械にセットしたり、後工程に自動で運ぶAGV(Automated guided vehicle:無人搬送車)に乗せたりするだけです。そのため、女性も安心して働くことができます。

 

未経験からでもスタートできる

半導体工場の仕事は、未経験からでもスタートできるものばかりです。たとえば、機械操作はマニュアルに沿って進めればOK。専門知識を必要としないので、未経験の方も働くことができます。

 

作業環境が良い

半導体製造工場は、完全に屋内です。半導体は非常に繊細ですので、クリーンルーム内温度管理厳重に行われており、暑いとか寒いということはありません。また、ほんのわずかなゴミも外部から持ち込むことは許されないので、非常にきれいな環境下で働くことができます。工場と聞くと「汚い」というイメージを持つ方もいますが、半導体工場はそうしたイメージとはかけ離れた清潔感溢れる作業環境になっています。

半導体工場で働く上で大変な点

魅力の多い半導体工場ですが、働く上で大変な点もあります。たとえば、半導体工場には日勤だけでなく夜勤もあるので、仮に夜勤で働く場合は生活リズムが崩れてしまうことも。ただし、半導体工場によっては「日勤だけ」「夜勤だけ」など希望に合わせてくれこともあるので、必ずしも日勤・夜勤を繰り返さなければならないわけではありません。

 

このほかにも、半導体工場で働く上で大変な点​には「クリーンスーツを着る」が挙げられます。

 

クリーンスーツを着る

半導体工場のクリーンルーム内で作業をする場合は、クリーンスーツを着用しなければなりません。クリーンスーツは通気性がなく、人によっては暑いと感じることも。私服と違って「暑かったら薄手の洋服を着る」ということもできないので、そこが大変な点といえます。

とはいえ、すべての方がクリーンルーム内で作業するわけではありませんし、クリーンルーム内は冷房も効いているのでとくに気にならない方もいます。

半導体工場に向いている人は?

半導体工場の仕事に向いている人には、「長時間作業をすることが苦痛ではない人」「責任感のある人」「細かい作業が好きな人」が挙げられます。

 

長時間作業をすることが苦痛ではない人

まず「長時間作業をすることが苦痛ではない人」は、半導体工場の仕事に向いています。なぜなら、仕事の多くには生産ノルマがあり、その数を達成するため長時間作業をこなす必要があるからです。もちろん、生産ノルマには無理な数字が設定されているわけではありませんが、集中力が切れて手を長いこと休めたりミスしたりするとクリアできないこともあります。そのため、同じ作業に黙々と取り組める方は生産ノルマをクリアしやすい、ひいては半導体工場の仕事に向いているといえます。

 

責任感のある人

「責任感のある人」も半導体工場の仕事に向いています。先述したように、半導体工場では機械操作だけでなく検査も行います。半導体の検査は微細で、専用の顕微鏡を使って外観見本と違いはないかチェックしていかなければなりません。仮に検査の際に異常を見落とすと損失につながってしまうので、責任感を持って検査を行う必要があります。そのため、何事にも責任感を持って取り組める方は半導体工場での勤務に向いているといえます。

 

細かい作業が好きな人

半導体工場の仕事は「細かい作業が好きな人」にもおすすめです。なぜなら、業務のひとつである「組立」を行う際には小さな部品を扱うため。とても繊細な作業になるので、大雑把な方や手先が不器用な方だと仕事を思うように進められない可能性があります。その点、細かい作業が好きな方ならスムーズに対応できるので、半導体工場の仕事に向いていると判断できます。

 

半導体工場で働くために必要な資格はある?派遣社員の正社員登用は?

仕事をする上で必要な資格はありませんが、製造工程の熟練度をはかる半導体製品製造技能士という国家資格があります。また、機械の保全に関わる「保全技能士」の資格もあり、持っていれば設備の一部を任されたり一部の工程の責任者となったりすることもできるでしょう。

 

半導体製品製造技能士

半導体製品製造技能士は、「半導体を製造するにあたり必要な技能を修得していること」を証明する資格です。「2級」「1級」「特級」の3つの等級があり、それぞれに受験資格が設けられています。

 

半導体製品製造技能士 等級別受験資格
・2級:実務経験2年以上
・1級:7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験
・特級:1級合格後5年以上の実務経験

 

2級と1級の試験には「集積回路チップ製造作業」と「集積回路組立て作業」があり、どちらかを選んで受験することが可能です。特級の試験には工程管理や安全指導管理、原価管理、職員への作業指導などの内容が追加されるので、難易度が高くなります。

 

 

保全技能士

保全技能士は、「機械保全の知識・技能を修得していること」を証明する資格です。取得すると「機械保全技能士」と名乗ることができます。「3級」「2級」「1級」「特級」の4つの等級があり、それぞれの受験資格は以下のとおりです。

 

保全技能士 等級別受験資格
・3級:実務経験なしで誰でも受けることが可能
・2級:実務経験2年以上、または3級合格者
・1級:7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験
・特級:1級合格後5年以上の実務経験

 

2級と1級に関しては、学歴によって実務経験の年数が変わる場合があるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

 

なお、保全技能士に関しては以下の記事で詳しくご紹介しているので、ぜひご覧ください。

 

保全技能士とは?資格取得のメリットと難易度・合格率・試験内容

まとめ

半導体は製造業の中でも市場が大きく、常に人材募集を出しています。今後もPCやスマホだけでなく、IoT化によって自動車や家電にも使用されることが間違いないため、市場が縮小することはあまり考えられません。

安定して高給の職を求めるのであれば、半導体製造工場は有力な選択肢の一つになるでしょう。

 

 

監修/細原敏之

高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。

 

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